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かくれ脱水コラム

コラム
更新日:2017/5/15
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クラブ活動中の熱中症予防と対策

夏・脱水対策が強化の基本!対談クラブ活動中の熱中症予防と対策

クラブ活動中の熱中症予防と対策

炎天下の屋外でのクラブ活動だけでなく、実は、体育館や武道場などの室内競技スポーツが、熱中症のリスクが高いといわれています。どうしても頑張るし、限界まで無理しがちなクラブ活動だからこそ、熱中症予防のための脱水対策が大切です。

今回は、教えて!「かくれ脱水」委員会から、十河剛委員が、都立小山台高校剣道部顧問土﨑祐一郎先生を訪ね、激しい室内競技である剣道における、高校生の熱中症リスクとその対策について語り合っていただきました。

剣道の熱中症リスクとは?

十河委員、まずご専門の立場から、
高校生のカラダは、熱中症に対してはどうなのでしょうか?

十河先生

十河 まず運動して温まったカラダを気化熱で冷やすための汗ですが、高校生は成人に比べて汗をかきにくいんです。かなり子供に近い。
だから、まだ熱がこもりやすいカラダだといえます。また、人間は、暑熱馴化つまり暑さに慣れる期間というのが重要なのですが、大人と比べると能力自体は変わらないけれど、慣れるのにすこし時間がかかるといわれています。基本的には2週間かかる。アメリカのフットボールの競技などは、順序立てて夏の暑くなる時期にあわせて、この期間はプロテクターを付けちゃいけないとか、カラダを暑さに慣れさせていくようにプログラムが組まれています。

剣道の熱中症のリスクはどのようなものがありますか?

十河 激しい運動でカラダが熱を持つだけでなく、体育館や武道場など、古い校舎でやることが多いですよね。そうすると、一般的に、壁や屋根からの伝導してくる熱をうけてしまいます。また、室内で風がどうしても抜けていかないような造りになっていると、空気が対流できないために皮膚の温度を下げることができなくなる。

剣道の熱中症のリスク

加えて、剣道では、防具を付けているので、対流があってもその効果を受けにくいんです。汗をかいても汗が防具の中にこもってしまい、蒸発しないために気化熱による体温調節もできにくい。熱中症の原因となるものを考えていくと、熱を逃がすということが困難な場合が多い、かなりリスクの高い競技です。

十河委員、小山台高校の道場を見られてどんな印象を持たれましたか?

体育館に設置された巨大な扇風機
体育館に設置された巨大な扇風機

十河 風通しのことが気になりました。窓が一面にしか無いようでしたから。でも、たぶん直射日光は校舎に直接あたらない工夫がされていると思います。並木で日差しを遮るようにされていますね。

土﨑 実は、ちょうど見学されている所から死角になっていたんですが、窓の反対側にトレーニングスペースがあって、そこにも窓があります。その両方を開けて、大型のファンを置いて道場内にそれで対流を起こすようにしています。

十河 ああ、それはいい(笑)

クラブ活動での、熱中症対処への意識変化は?

土﨑先生、剣道の現場では、今のような話についての理解はいかがでしょうか?

土﨑

土﨑 近年は、日本全体で、真夏日とかいわれるようになって、自分たちが子供の頃に経験したことの無い、暑い日差しが照る日が続く中で運動しなければならない。きちんと水分補給をして運動するための科学的な知識が必要になってきたと感じています。

剣道界全体としても、夏場の稽古はそうしたリスクがあるということを認識しています。今、夏場の大きな大会は空調設備を整えておこなっています。日本武道館でもそうですし、東京武道館でも。

最近の稽古では、脱水しないように、運動した後に水分を摂るのではなく、先に水分と電解質を摂っておいて、その摂った分を汗として出す。カラダの水分量はなるべく変わらないようにしておきなさいということが指導としていわれるようになってきました。我々もなるべく稽古の前にまず水分を摂っておくようにとか、朝稽古のときやランニングのとき、なるべく前に水分と電解質を摂っておくようにしています。

十河 そうですね、最近は激しい汗をかくときは、体重減少を2%以内に抑えるようにいわれています。そのために、先に水分や電解質を摂っておくことが推奨されているんです。体重を稽古や練習の前後で測るというのが理想なんですが、なかなかそこまではいきませんので、目安として前もって飲んでおくということですね。

稽古中に気をつけていることは?

土﨑 気分が悪くなってきたとか、ちょっと動きが悪いなあ、というような生徒には、すぐに防具を外させて、楽な状態にして風当たりのいいところで休むようにいいます。スポーツドリンクを飲んで休養すれば、次の日は普通に回復しているようです。

稽古を終え防具を外す部員たち
稽古を終え防具を外す部員たち

十河  剣道の稽古は一対一で行うことが多いので、なかなか防具を外すタイミングが無いということも上げられますね。

土﨑 はい、剣道のような、対人競技の稽古というのは、柔道もそうですけど休む時間がないですね。剣道だったらどっちかが打つ、どっちかが打たせるという役割分担。それを交代して何度もやる。そのため、稽古の継続時間や生徒の状態を配慮して、どこかのタイミングで一回防具を外して休む、あるいは水分補給をするということが必要になってくると思います。

稽古の時間に関してはいかがでしょうか?

土﨑

土﨑 夏の練習は、基本は2時間前後、長くても2時間半です。最初は、面とか小手を付けない状態での素振りとかの基本の動き。それから防具を着けて基本の動き。その後、また防具を外して水分補給をして後に基本をやって、また防具を付けて激しい動きの稽古という具合です。合宿などでは、朝のうちに激しい稽古をやって、暑くなってからはおさえてやるなどの工夫もしています。

剣道という武道の精神面を鍛えようとすることからのリスクはどうでしょうか?

十河

十河  たしかにあるでしょうが、それ以上にクラブ活動ということが大きいんですね。クラブ活動というのは、先生と生徒、仲間同士、先輩と後輩など、いろいろな関係のなかで行われます。何かストイックに記録や技術をつきつめる環境とは違う。このような環境の中でやっていると、周囲からのプレッシャーもありますし、同級生へのライバル心も湧く。あいつは頑張っているとか、あいつは根性が無いとか、やる気が無いとか、自分でも人からも評価がともなうし、個人的に追いつめられているところがあります。結果として、体力の限界ぎりぎりまでいってしまうようなこともあるわけです。

顧問としてはどのような点を注意されていますか?

土﨑

土﨑  顔色とか、唇の色とか、普段じゃない状態とか、、、。今の時代は、無理は絶対にさせません。もちろん、本人が不調を訴えてきたときのガマンもさせません。

問題は、夏場などに寝不足で来たりする生徒です。そういう生徒は体調を崩しやすい。何となく気になる生徒に「昨日寝たのか?」と聞くと「いや、昨日は夜更かしをして、、」などということがある。そういう生徒は休ませますね。スマホでラインやったり、ゲームやったりして、夜更かしする例は多いですよ。

十河  運動をやっている子は、睡眠が大切です。私の周辺でも、熱中症になる子は、寝不足、それに朝ご飯を食べていない子が多いですね。運動をする生徒は、朝食でしっかり栄養と水分や電解質を摂ることがとても重要なんです。

終わってからの水分補給は、濃いめの塩分を。

稽古中や稽古後の水分補給はどうされていますか?

土﨑 スポーツドリンクを、校内にある自動販売機などで買って、なるべく飲むように勧めています。学内の自動販売機はスポーツドリンクがよく売りきれになっていますよ。

高校生は、みんな水分と電解質を摂ることをわかって飲んでいるようです。

激しい運動の後も、スポーツドリンクで大丈夫なんですか?

十河

十河  ひとつは糖分の問題がありますね。競技や練習の最中というのは、糖分の入った(スポーツドリンクは5%程度の糖分)ものでいいんです。ただ、終わった後に補給するものになってくると、糖分しか入っていない飲料の摂りすぎは、カラダに水分が保持されず尿量が増えますので、あまりお勧めしません。

水分保持の本題からすると、激しい運動や稽古が終わった後は、ある程度塩分が濃いものの方がいいのです。運動が終わったときに飲む水分として、ナトリウム量が少ないと、水分のカラダへの定着が悪く尿として出て行ってしまう。

数年前に、私の病院に熱中症で救急搬送されてきた生徒は、家に帰ってから症状が進行していました。その子に話を聞くと、水分を摂っていたけれども、麦茶だった。電解質がありませんから、汗を大量にかいて疲れてそのまま家に帰ったときには、すでにナトリウムの濃度が薄くなっています。カラダは尿で水分を排出して濃度を調整しようとするんです。それで、結果として脱水症状がひどくなり熱中症に至っていた。病院の売店でOS-1を買ってきてもらい飲ませたら、すーっと回復しました。

そういった意味では、経口補水液のOS-1などは、塩分が多くて糖分が少ないので、水分や電解質がカラダに定着します。栄養をしっかり摂って睡眠をとって、水分とともに塩分や糖分を適度にとるということは、回復にもつながると思います。

稽古後、経口補水液を飲む男子部員
稽古後、経口補水液を飲む男子部員
土﨑

土﨑  運動するときに、その前、その途中、その後に塩分を含む水分を摂るということは、ここ数年で本当に定着してきたと思います。
練習後に、ちゃんと水分と電解質を摂っていると(もちろん睡眠や食事による栄養も)翌日の疲労感の抜けが違うように感じます。筋肉のハリが違うのとか。とくに夏場は、高校生にはインターハイがあります。この剣道大会は、3日間競技が続きます。他の種目も同様で、長いものは1週間くらい続きます。やっぱり試合が終わった後に、寝る前にどれだけのケアをしているかが大切ですね。

十河  脱水になるとパフォーマンスが落ちるというのはまちがいのないことなので、強くなるためには、脱水にならないでいい状態でトレーニングしていくことは当然大切です。集中力が無い状態でトレーニングするのと、集中力を保った状態でそれをやるのとでは中身が違います。

熱中症予防には、なにより早めの脱水対処!

運動を指導される方々にひとこと

熱中症予防は、早めの対処が必要
熱中症予防は、早めの対処が必要

十河 熱中症は早めの処置をしてあげることが大切です。Ⅰ度Ⅱ度の段階で処置をしておけば、その後に重篤になるようなことはありません。先ほど土﨑先生が子供たちの顔色が悪くなっている時には休ませるといわれましたが、これはⅠ度Ⅱ度の症状です。その段階でしっかり対応されているので、問題が無いのだと思います。Ⅰ度Ⅱ度の段階を理解して、その段階でどういう対応をしたらいいのかを知っておくことがいちばん大切です。

実は、高校はまだいいと思います。自分で判断ができますから。中学校だと、学校に自動販売機がまだ無かったり、自分での判断を口にしにくい状況などがあります。お金を持っていないので、部活が終わって家に帰る途中で、気分が悪いからとスポーツドリンクなども買えない。学校によってはスポーツドリンクを持ってきてはダメという所も、まだあるらしいです。そういうことに対する意識を変えていって欲しいですね。

土﨑 いろいろな事情からきめられているのでしょうが、運動部に入っている子供たちには、理解してあげて欲しいですね。

I度熱中症の症状
十河剛

済生会横浜市東部病院
小児肝臓消化器科 副部長 医学博士
十河剛(そごう・つよし)

1970年 東京生まれ。1995年 防衛医科大学校医学科卒。段躰道七段教士。合気道二段剣道二段。日本小児科学会認定小児科専門医。日本肝臓学会認定肝臓専門医。日本消化器内視鏡学会認定消化器内視鏡専門医・指導医。自宅敷地内に道場建設し、Sogo Budo Academy International設立。現在、子供達や学生達への指導を続けている。

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