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かくれ脱水コラム

コラム
更新日:2017/5/15
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運送業で働く人は、熱中症への危険がいっぱい。

注意!職場の熱中症。運送業で働く人は、
熱中症への危険がいっぱい。

大量の汗を流しながら作業を行う労働の現場には、熱中症のリスクがあふれています。今回は、そうした作業現場の中でも、運送業の現場に注目。屋外と室内を行き来し、個人で作業管理をせざるをえないことが多い運送業にも、さまざまな熱中症・脱水症へのリスクがあります。

教えて!「かくれ脱水」委員会では、産業医でもある山田琢之委員に、Q&A形式で、運送業における熱中症・脱水症の危険とその対処についてお聞きし、考えてみました。今、運送業に従事する方々に読んで欲しい情報となっています。

山田琢之

愛知医科大学客員教授
なごや労働衛生コンサルタント事務所長
エスエル医療グループ栄内科院長
山田琢之(やまだ・たくじ)

名古屋市職員健康管理センター所長、名古屋市役所産業医、愛知医科大学産業保健科学センター助教授などを歴任し、現在は愛知医科大学客員教授、なごや労働衛生コンサルタント事務所長、エスエル医療グループ栄内科院長を務める。医学博士、労働衛生コンサルタント(保健衛生・厚生労働省)、日本産業衛生学会指導医、日本医師会認定産業医。共著に平成25年4月発刊の「産業保健マニュアル」(南山堂:共著)などがある。

運送業の方々が、夏の安全を得るためのQ&A

運送業の方々が、夏の安全を得るためのQ&A

Q1:今年、厚労省から発表された「熱中症による死傷者数の業種別状況」を見ると、運送業に携わる方の死傷者数が、建設業、製造業に次いで、非常に多いことがわかります。どうしてでしょう?
A1:運送業は、熱中症・脱水症へのリスクに対する理解が行き届いていないのかもしれない。
運送業は、熱中症・脱水症へのリスクに対する理解が行き届いていないのかもしれない。

運送業の場合は、熱中症による死者の数は、屋外作業が多い農業や警備業に比べると少ないのですが、熱中症が発症し、医療機関へ救急搬送される方が非常に多いことが特徴です。また、発表されたデータをよくみていくと、熱中症による炎天下の作業を強いられることの多い建設業や、熱暑の環境下での作業が続く製造業に従事する方達の、熱中症による死傷者数が減少傾向にあるのに比較し、運送業では近年になっても増加傾向にあるようです。
これは、熱中症に関する予防や対処についての情報理解が、建設業・製造業に比べ、運送業では、作業現場が移動し一人での作業が多いために、管理者が常に作業現場を見ることができず、職業が持つ熱中症・脱水症へのリスクへの理解不足や、熱中症に至る脱水症の予防や対処についての情報不足が浸透しにくいことが考えられます。

運送業の方々が、夏の安全を得るためのQ&A

Q2:建設業や製造業は、熱中症・脱水症対策が浸透してきていると聞きます。どのような対策とその予防をしているのでしょうか?
A2:建設業や製造業は、職場の改善と労働管理によって、熱中症は発生が抑えられてきている。
建設業や製造業は、職場の改善と労働管理によって、熱中症は発生が抑えられてきている。

実は、建設現場や製造業における工場などでは、熱中症や脱水症の予防について、さまざまな対策がなされ、監督や管理者の方々にも、脱水症予防や熱中症への早めの対処の知識が浸透してきています。厚労省からも、建設業や製造業については、細かな熱中症指導が行われていて、現在では、多くの企業が、産業医や職場の衛生管理者などの産業看護スタッフを通じて、さまざまな熱中症への対策をおこなっています。

例えば、朝礼などで、日頃の健康管理を指導することはもちろん、WBGT値(暑さ指数)を確認して、その値による労働基準を守るようにしていますし、作業場においては、日光の照り返しを防ぐ簡易的な屋根の設置や、スポットクーラー、大型扇風機などの使用、それに冷房やシャワーなど、カラダを冷やし休ませる場所としての休憩所の確保など、細かい指導が通達され、かなり実現してきています。透湿性や通気性のいい服装の奨励や、休憩時間をこまめに設けること、作業者同士での声かけなども浸透してきました。

作業中の、経口補水液による水分と電解質の補給についても、WBGT値との関連で摂ることが浸透してきていて、工場や建設現場には、経口補水液を冷やして置くところも増えています。夏場の気候やヒートアイランド現象などは、年々、厳しい状態になりつつありますが、熱中症の搬送者が大きく増えていないのは、こうした理由からだと思います。

身体作業強度等に応じたWBGT基準値

運送業の方々が、夏の安全を得るためのQ&A

Q3:一方、運送業の現状をどうお考えですか? 代表的な職種の熱中症リスクとその対処について教えて下さい。
A3:運送業のなかでも、職種によって熱中症や脱水症リスクがとくに高いものがある。
運送業のなかでも、職種によって熱中症や脱水症リスクがとくに高いものがある。

建設業や製造業では、作業中は、管理者が作業者に異常がないかを頻繁に巡視することも普通に行われています。また、作業員の自覚に関わらず、水分と電解質の補給を推奨することも作業管理の中で行われています。

運送業の場合は、個人での作業が多いこともあり、建設業や製造業のように、働く場所での対策をおこない、作業中も管理していくことができにくいのです。脱水症の自覚症状がなくとも定期的に水分と電解質を補給すべきですが、個人に任せた場合は、実行しにくいかもしれません。時間に追われる仕事ですから、休憩も計画的には取りにくいと思われます。また、一口に運送業といっても、その関係職種は、倉庫業から、宅配ドライバー、港での貨物移送作業など、作業環境も作業内容も多様です。ですから、一概に対策を決めにくいという点もあります。それが、熱中症・脱水症対策が遅れているように感じる要因かも知れません。ただし、職種によっては、熱中症や脱水症のリスクが非常に高いものもあります。

■運送関係の冷蔵倉庫業

マイナス数十度の冷蔵庫から摂氏30度以上の室外を行き来する。気温の寒暖差の激しい場所で仕事をしたりすると、カラダの体温調節の機能が低下し、汗をかきにくくなり、熱中症リスクが高まる。
(対策)自覚症状がない場合も、こまめな水分と塩分の摂取を。作業量や作業強度などを、個人の体調に合わせて調整。

■宅配業者

大きなマンションなどでは、荷物を台車に積んで汗だくで走る姿が見受けられるが、熱を持ったカラダで、エアコンの効いた車内に戻り、また外へと、車内と外を頻繁に行き来するようでは脱水症になりやすい。
(対策)荷物を配達するドライバーは、温度差を避けるために、窓を開けて走るなど、温度差をつくらないような対策をみつける。そして、涼しい場所でのこまめな休息で、熱を持った筋肉を休めながら、水分と電解質を摂ることが必要です。

■引っ越し業

他の職種より脱水症から熱中症を起こしやすい。熱い屋外で重い荷物を運ぶ、激しく筋肉を使う職業。大量の汗をかく。筋肉は熱を持つし脱水しやすい仕事。にもかかわらず、お客様の手前、トイレを借りるわけにもいかず、水分摂取をガマンすることが多い。職業に従事する年齢層が若いですから、「なんとかなるだろう」と無理を重ねているというのが現状。
(対策)涼しい場所でのこまめな休息とトイレタイム。都度の水分と電解質の補給。

個人で判断するために、熱中症についての分類と、その対策を知っておきましょう。

熱中症は「どのくらい症状が重たいか」という重症度により、Ⅰ度、Ⅱ度、Ⅲ度の3つに分類されます。

[熱中症の新分類]
Ⅰ度 めまいやたちくらみを自覚する/筋肉痛やこむら返り(脚がつる)がある
拭いても拭いても汗がどんどん出てくる
Ⅱ度 頭痛、悪心(吐き気)、嘔吐を認める
つかれやだるさといった全身倦怠感を自覚する
Ⅲ度 意識障害を認める/けいれんが起こる/体温が高くなる
熱中症には、とくにⅠ度の症状が現れる以前に、速やかな対処が求められます。

熱中症のおよそ60%はⅠ度。脱水が進んでいますが、体温調節機構が破綻して体温が上昇するのはⅡ度以降。Ⅱ度以降は症状が重篤なので、体温が上がらないⅠ度の段階で対処することが大切です。しかもⅠ度からⅡ度は数十分、そしてⅢ度にあっという間に進行する恐れもありますから、十分な注意が求められます。

[各段階での対処法]
Ⅰ度 涼しい、風通しの良い場所に移す/安静にしてカラダを冷やす
水分、塩分、糖分を補給する
Ⅱ度 Ⅰ度の対応を持続する
誰かが必ずそばで見守り、症状が改善しなければ病院へ移す
Ⅲ度に悪化した場合も病院へ移す
Ⅲ度 Ⅰ度、Ⅱ度の対応を継続する/すぐに救急車を呼び、病院へ移す

運送業の方々が、夏の安全を得るためのQ&A

Q4:運送業の方が熱中症や脱水症予防のために、普段から出来ることはありますか?
A4:自分でできる健康管理が、なにより大切

先にあげた職種の方々だけでなく、運送業のような激しい労働に従事をする人は、個人で熱中症や脱水症の知識を身に付け、それに対処することはもちろん、普段からの健康管理に気をつけておくべきです。

自分でできる健康管理が、なにより大切

運送業の方々が、夏の安全を得るためのQ&A

Q5:運送業の方々へ、産業医としての助言をお願いします
A5:労働後の水分補給に注意。水だけはダメ!アルコールは勿論禁物。

運送業に於いても、企業や管理者の方々は、建設業や製造業と同じように、熱中症・脱水症への対策を徹底していただきたい。出勤時には、体調の観察や脱水への注意喚起とともに、事務所に経口補水液などを常備して、さらに車内にクーラーボックスなどを備えることなどを勧めて欲しいと思います。

また、夏場の労働の後は、基本的に軽い脱水状態=かくれ脱水になっていると考えていいものです。作業後に、作業開始より1.5%より体重が減少していた場合は要注意ですが、ノドが渇いたからといって電解質のない水分だけを飲むのは止めましょう。もちろん、ビールだけを飲んでのどを潤すなことは危険です。帰宅後に脱水状態が進行し、熱痙攣を起こすこともあります。作業の後は、栄養分とともに塩分などの電解質と水分を摂ることが望ましいのですが、「まず水分を」という場合は、経口補水液をお勧めします。

労働後の水分補給に注意。水だけはダメ!アルコールは勿論禁物。
クーラーボックスに備えられた経口補水液

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