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かくれ脱水コラム

コラム
更新日:2016/4/1
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一目で分かる 新型ノロウイルスへの予防と対処

新型ノロウイルスを発見。
川崎市健康安全研究所 岡部信彦先生からの提言

川崎市健康安全研究所所長 岡部信彦

「新型ノロウイルスを検知したことが広く伝わることによって、予防や対処への意識を喚起する効果につながると良いと思う」

川崎市健康安全研究所所長
岡部信彦(おかべのぶひこ)

1947年東京生まれ 東京慈恵会医科大学卒 同大小児科助手、WHO西太平洋地域事務局(フィルピン・マニラ市)伝染性疾患予防対策課長、同大小児科助教授、国立感染症研究所情報センター長などを経て、2012年より現職。

ノロウイルスの遺伝子は変異しやすいのですが、新型ノロウイルスといっても新型インフルエンザのように、症状が大きく変わるということはないと思います。ノロウイルスに繰り返して感染した人は次第に抗体ができてくるのですが、この新型には感染の経験がないので免疫を持つ人がほとんどいないために、誰もが同じように感染リスクがあるといえます。感染者が多くなれば重症者も増えることになります。日本だけではなく、海外でも同様のウイルスが検知されていますから、世界的に流行する可能性もあると思います。

新型のノロウイルスが発見されたことがメディアなどでも流されました。私たちの発見が、社会に伝わることによって、ノロウイルス感染に対する事前の注意喚起や対策がなされ、それが流行を抑える効果に、あるいは流行したとしても重症化防止につながってくれればと期待しています。流行する可能性が早めにわかったのであれば、これに対して身構える。準備期間はあるのだから、行政や学校、会社、そして個それぞれのレベルで予防のために出来ることをやっておく、対策のための知識を得ておく、ということです。突然パンチがやってくるより、身構えたほうがそのショックを和らげることができる。そんな感じです。

新型ノロウイルスも、症状は、いままでのものとほぼ同じと考えていいでしょう。感染してから発症するまでは1~2日。発症すると多くの場合、激しいおう吐があり、下痢の症状が続きます。激しいおう吐は普通1日程度、長くとも2〜3日で止まります。下痢も普通1〜3日で治まりますが、回復しても1~2週間は便中にはウイルスがいることが多いので、他の人へうつさない思いやり、注意が必要です。

感染源は食物としては牡蠣などの二枚貝に多いので、美味しいけれど流行の時期には生で食べるのを控えるか、食べるときも熱処理をしたものにしておくほうがいいでしょう。この時期には、ことに体力の弱い高齢者や子どもには生の二枚貝は食べさせないほうがいいと思います。ただし、ノロウイルスの感染は食べ物からだけではなく、感染した人の便や吐物から他の人にうつりやすいので、その点の注意も必要です。

注意としては、なによりも普段からの手洗いです。これから流行の予想される時期には丁寧に手を洗ってください。とくに子どもたちには、石けんを使い丁寧に手を洗う習慣を普段からつけておくことが大切です。ノロウイルスはほんの少しのウイルスで感染する強いウイルスです。トイレで用をたし、そのままだと当然手で触る服やタオルなどにもウイルスが広がります。家庭の主婦や、調理をする人などは、罹患した際はもちろん、回復したあとも手を丁寧に洗うということ忘れないでください。なおアルコール消毒はノロウイルスにはあまり効果がありません。

手を丁寧に洗うということ

発症したら、下痢・おう吐による水分不足すなわち脱水を防ぐために、水分を補充することが必要です。ウイルス性の感染性胃腸炎は放置しておいても自然に回復しますが、おう吐や下痢から脱水状態が進行してしまうと重症に陥ることがあります。高齢者ではさらに急激な筋力の低下や、体力の消耗が続きます。脱水とは別に、おう吐物を喉につまらせての窒息や、誤嚥による肺炎などにも、注意が必要です。

おう吐や下痢などによる脱水状態を進行させないためには「出たものを補う」という考えで水分補給を行います。この場合単なる水や白湯などではなく、電解質成分が含まれた水分(経口補水液など)を少しずつちびりちびりととるようにするとよいでしょう。学校とか会社など、集団生活をする場所では、ノロウイルスが流行る時期には保健室などには経口補水液を常備しておくとよいのでは、と思います。

経口補水液

他者への感染を防ぐことも大切なこと。ノロウイルスに感染して発症する人と発症しない人がいます。発症しても症状が軽い人と重くなる人もいます。自然の免疫力などによって違うのでしょうが、詳細なメカニズムはわかっていません。ただ、軽い人でも感染者はウイルスを便から排出することがあります。流行の時期に下痢をしている人は、感染源になることがあるので気をつけてください。トイレに行ったときには、多くの場合は手を洗う前に、おそらく自分の服を整えるでしょう。もしその人がノロウイルスに感染していたとすると、その人の服やベルト、ホックなどはその段階でノロウイルスだらけになります。私は、ノロウイルス予防のことを考えるなら、駅やホテル、学校も、トイレの個室の中に手を洗う場所を作ったほうがいだろうと思っているのですが、なかなかむつかしいですね。

  • 予防のために覚えておきたい5つのこと
  • 対処のために覚えておきたい5つのこと

新型ノロウイルス。これを覚えておくと安心。
予防のために出来ること

1.誰もがかかる可能性がある。11月末〜1月末が流行のピーク

岡部先生が語るように、新型ノロウイルスは、既に何度もノロウイルスに感染して抵抗力(抗体)を持っている人でも感染します。つまり、誰もが感染リスクを持っているということを事前にわかっていることが、最大の予防に役立つ情報だといっていいでしょう。

2.手洗い、うがい、マスクの習慣化

手洗い、うがい、マスクの習慣化岡部先生が語るように、新型ノロウイルスだからといって、特別新しい予防方法はありません。基本は、流行時期はもちろん、日頃からの手洗いの習慣づけ。そして外出時にはマスクの励行と、帰宅時のうがいです。
ノロウイルスの場合は、完全な予防は不可能ですが、手のひらだけでなく、手の甲、指の間、ツメの中、そして手首なども、丁寧に洗うことによって、ノロウイルスの大部分が除去できるといわれています。かくれ脱水JOURNALにも手洗いの記事を載せていますし、さまざまな地域で手洗い方法の冊子やパンフレットが配布されています。参照してください。

  • 石鹸をつけ手のひらをよくこする
    ①石鹸をつけ手のひらをよくこする
  • 手の甲を伸ばすようにこする
    ②手の甲を伸ばすようにこする
  • 指先・ツメのあいだを念入りにこする
    ③指先・ツメのあいだを念入りにこする
  • 指の間を洗う
    ④指の間を洗う
  • 親指と手のひらをねじり洗いする
    ⑤親指と手のひらをねじり洗いする
  • 手首も忘れずに洗う
    ⑥手首も忘れずに洗う
  • その後、十分に水で流し、清潔なタオルでよくふきとって乾かす
    ⑦その後、十分に水で流し、清潔なタオルでよくふきとって乾かす

マスクは、飛沫感染からの予防に威力を発揮するといわれていますし、冬場の乾燥からノドや鼻の粘膜を守って感染への抵抗力を高める働きもあります。ノロウイルスに限らず、インフルエンザなど飛沫感染のリスクの多い季節は、マスクは、いつでも付けられるように、家に常備しておきましょう。

3.流行状況を把握する

ニュースやWebサイトなどで流行情報を得、周囲のコミュニティで流行ったなと思うときは、ウイルス感染後に症状の出やすい高齢者や小児は、極力人ごみを避け、できれば必要最小限に外出を控えること。

4.経口補水液を事前にストック(常備)する
経口補水液を事前にストック(常備)する

ウイルス感染し症状が発生するのは突然です。おう吐や下痢が発症する初動時に、脱水症状の進行防止に有効な経口補水液を家に事前に備えておくと慌てないで済みます。

岡部先生が語るように、軽い症状を進行させないためには、おう吐や下痢で、出たものを補う、というくらいの考えで経口補水液を少しずつ数分おきに摂ること。家庭はもちろん、集団生活の場である学校や会社でのストック(常備)も、お勧めします。

5.流行する季節には、二枚貝類などの生食あるいは調理不十分な食べ物を控える

とくに高齢者は、生の魚介類や、半生の肉類、生卵などを控え、食べるときは十分な加熱処理をすること。流行が予想される11月末から1月末の季節では、付近の高齢者施設や地域のコミュニティでの発症情報に注意し、感染源といわれる食材(牡蠣などの2枚貝)はとくに控えましょう。高齢者や小児は食べないほうが無難です。

新型ノロウイルス。発症したときに慌てないために
覚えておきたい対処法

1.激しいおう吐は通常1日(長くとも2〜3日程度)、下痢は通常1〜3日(長くとも1週間程度)で回復

激しいおう吐は通常1日(長くとも2〜3日程度)、下痢は通常1〜3日(長くとも1週間程度)で回復不安を感じるときは相手を知ること。新型ノロウイルスも、その症状はある程度わかっています。感染し発症するまでに12〜24時間。激しいおう吐があり、下痢の症状が続きますが、おう吐は普通1日で終わり、長くとも2〜3日で止まります。下痢は普通1〜3日で治まり、長くても2週間で、お腹の症状は徐々に治癒します。問題は、発症したときに速やかにおう吐や下痢が引き起こす脱水への対処をすることです。

2.おう吐、下痢の症状が出たら脱水になることを防ぐため水分の補充をする

おう吐、下痢の症状が出たら脱水になることを防ぐため水分の補充をするウイルス性の急性胃腸炎は、急におう吐などの激しい症状が始まるので、慌ててしまいがちです。おう吐や下痢が続いても、その初期段階で失われるカラダの水分や電解質を補い、脱水に対処していればそれほど心配することはありません。大切なことは、少しずつ数分おきに経口補水液を摂って、脱水を改善すること。

おう吐や下痢が続き、脱水状態になった場合は、そのサインとして、口のなかが乾く、おしっこの量が減ってくる、幼児の場合は涙が出にくくなることが挙げられます。目が落ち込んできたり、おしっこがでないようなら、主治医やお近くの病院へ相談してください。

3.おう吐物など処理の仕方・掃除の仕方を覚え、部屋の換気を十分に行う

おう吐や下痢などの処理の仕方を覚えておくことは、人の集まる場所や家族内での感染拡大を防ぐために大切です。

ノロウイルスは、その粒子が小さく感染力が強いウイルス。たとえば、子どもが発症し、リビングでおう吐した場合は、一回のおう吐でリビングの隅々までウイルスは飛び散っていると考えていいでしょう。

目に見える場所だけを布などで拭き取るのではなく、必ずマスクとゴム手袋をし、まずおう吐物をビニールなどに包み込み、その後、布などでしっかり拭き取ること。布は汚物と一緒にビニール袋などに密閉して処理します。その後に、塩素系漂白剤を、だいたい1%程度に薄めてリビング中を消毒しなくてはいけません。おう吐した子どもや掃除した人の服もウイルスが付着していると思われますので、同じようにビニール袋などに密閉のうえ2週間程度は保管し、後日洗濯するなど工夫してください。ノロウイルス対策セットなど、市販のものを使用するのもいいでしょう。

「ノロウイルス対策セット」イカリ消毒(株)
「ノロウイルス対策セット」イカリ消毒(株)
一般的な吐物処理キットの内容。現在さまざまなメーカーがこうした
基本セットで販売している。(撮影協力:機能水研究振興財団)

また、乾燥するとノロウイルスは空気中に漂い、空気感染の原因にもなります。おう吐物処理をした部屋はもちろん、流行する季節は、部屋の換気を意識しておこなってください。

4.手を洗った後のタオルを共有しない

感染者の便1gには1億個以上、おう吐物1gには100万個以上のウイルスが含まれています。家族に感染者がいる家庭では、感染者はトイレの蓋を閉じて水を流すこと。開けたままでは,水洗の粒に含まれたウイルスがトイレ中に飛び散ってしまうのです。ノロウイルスは数10個でも感染するといわれていますから、感染者が使った後のトイレは、面倒でも塩素系の漂白剤で消毒することを考えてください。流行している時期は、家族のトイレのタオル共用などもさけることも覚えておきましょう。

手を洗った後のタオルを共有しない
5.症状が改善しても1~2週間ほど、便中にはノロウイルスがいることがある

岡部先生が語られているように、新型に限らずノロウイルスは後を引くことも覚えておきましょう。一度罹った人が症状から回復し、普段通りの行動をしていても、ノロウイルスは人によって1〜2週間は便などに残っています。直接料理を作る人や、家庭の主婦などはもちろんですが、ノロウイルスによる感染性胃腸炎を経験した人は、他者への感染を防ぐためにも、手洗いの徹底など、注意を怠らないでください。

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