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かくれ脱水コラム

コラム
更新日:1年前
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想定外の出来事に、被災者の健康面を徹底フォロー 熊本市健康福祉局の挑戦

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かつてない2度の震度7。そして2,000を超える余震被災から1ヶ月を過ぎても3,000人を超える人々の避難所暮らしが続く熊本市。被災者の健康を支援する最前線、健康福祉局・健康づくり推進課のスタッフは、このはじめての体験に何を学び、何に邁進したか。その経験からいま思うことを率直に語っていただいた。

話をお聞かせくださった熊本氏健康福祉局保健衛生部健康づくり推進課の面々。右から保健士の田中すみ子氏、谷昭子副課長、木櫛聖子氏、管理栄養士でもある丸内晃子氏

通常とは違う場所、避難所にあるリスク

かくれ脱水JOURNAL(以下:J):熊本震災はおそらく皆さんの想定外のことが多々あったと思います。この貴重な体験を通じて、皆さんが人々の健康をフォローしていくにあたって、何を思われたのかをお聞かせください。

かくれ脱水JOURNAL

 保健衛生部・健康づくり推進課(以下、K):避難所では、最初はエコノミークラス症候群と、感染性胃腸炎、それに食中毒の対策をしました。それから「ロコモ」(ロコモティブシンドローム=運動器障害)とカビの問題が避難所にはあります。梅雨が厳しいからですね。ただ、そういうのはある程度予想できたところでした。避難所に集配する場所があって、早くから経口補水液のOS-1とかも、ちゃんと確実に避難所へ届くように、使い方を書いた紙を入れて配送したりしました。

J:避難所自体の衛生管理やルールづくりはどうでしたか?

K:全部の避難所に「避難所3原則」を貼ってもらうようにお願いをしました。最初のエコノミークラス症候群のときは、運動や水分摂取などの予防法や弾性ストッキングの着用の仕方とかも記したチラシを配り、避難所の外にも張り、駐車中のクルマのワイパーに挟んでもらって注意喚起をしました。

J:避難所三原則とは?

避難所三原則

K:阪神淡路を経験された神戸市さんに後方支援で来ていただいたので、ご指導いただいたものです。雨とかが降って、そのまま濡れた靴で行くと、そこが乾いて今度ほこりが舞い上がって、そこからそれを吸って肺炎になったりするから、絶対「土足禁止」。トイレに行ったときも「汚いのを持ち込まない」。1カ月ぐらいするとやっぱりアルコールの問題でかなりトラブったりもするから、「禁酒」これはぜひと。避難所での健康支援をどうしていいかもわからないなか、神戸市から阪神淡路の第一線で活躍された課長級の人たちを3週ぐらいまで随時、派遣していただきました。
時期、時期に合った助言をいただいて、それはすごくありがたかったです。

J:トータルで避難所幾つでした?

K:最初は250カ所くらい。避難所の数がもともと想定していたよりもかなり多かったです。

被災して分かった、大切な水の確保と消毒のこと

J:何がいちばん困りましたか? また、体験されて気づいたことはありますか?

K:被災後、最初は、ライフラインが止まって、手洗いの水はないです。消毒するような塩素酸ナトリウムとか、通常のアルコール消毒とか手ふき紙ナプキンとか。多分、落下物とかでの切り傷の方も多かったと思うんですけど、そういうようなものをケアする衛生材料がない。予想しないことでした。困りましたね。わたしたちも届けたいけど品がない。いろんなところの業者さんに声をかけるんですけど、物流が止まっていたので。

血圧計や救急箱も各避難所に設置するよう指示があったのですが、二百何十個でしょう。事前に、備蓄として確保はしてあったんですが数が全く足らなかった。全てが不足したっていうか。それに、いきなり注文掛けてもないんですね。もう本当にあらゆるところに連絡して、ちょっとずつ手に入れて、1カ所で必要なものが揃うなんてことは非常時ではないんだと知りました。

J:消毒関係とかが行き渡ったのはどのくらいたってからですか。

K:4月21日(5日後)ですね。結局、流通が回復すると物が来だすので、取りあえず薬剤も作れないのでアルコールを届けました。アルコールではノロウイルスにはあまり効かないですけど、しないよりはいいと。それまで、水がないから、流水でお手洗いもできないし。それからまた数日で、有り難いことに水が出だしました。
このときは、食べ物というより、実は、まずは水と消毒薬がいちばん必要かなと実感しています。 食べ物に関して言えば、今回はずっと食料がなくて地震にあったわけじゃなくて、その少し前、晩ご飯までたっぷり食べているわけですよね。だから、そんな次の日の夕方ぐらいまで食べなくても水分とかだけ補給していれば、まあ大丈夫だと思えるんです。

感染症と熱中症。その対策として経口補水液を活用

J:感染症に関してはどういう感じで?

K:ノロ対策とかです。当初から、感染症は感染症対策課がずっと避難所を回って。発症した場合、隔離するスペースを作るよう各避難所に言って回りました。保健所のほうも全部巡回もされて、チェックをしています。今からがやっぱり脱水症・熱中症、それに食中毒、その辺は心配ですね。

J:予防対策ですね。どのようにお考えになっていらっしゃいますか。

K:脱水症・熱中症対策には、喉が渇く前にとにかく水を飲んでという啓発は、すごく大事なところなので標語を壁に貼るなどして伝えています。保健師の視点で、避難所にいる看護師さんとか、本人さんにはヒアリングで、例えば水分補給を定期的にしていますかとか。また高齢者に多いのですが、飲みかけのボトルをそのまま残して次の日に飲む、とかがある。家の冷蔵庫で保管しているならまだいいけど、暑いとき飲みかけのを置きっ放しにしておいたら、雑菌が繁殖しておなかを壊したりしますよとか。質問しながら、同時に疑問に答えてあげることを、声掛けしながらやっています。

また、現在も経口補水液を全避難所に配布しています。当初6,000本を大塚製薬工場さんのご好意で頂きました。それからさらに10,000本頂きました。もちろん水代わりに飲むものではないので、経口補水液OS-1の摂り方も指導していますし、避難所での食事自体が塩分多めでタンパク源や野菜は少ないなど偏るので、長期化すると今度は高血圧の問題とか、腎機能が衰えた高齢者の問題などもあります。そのために大体経口補水液1本がどのぐらいの塩分相当ですよというお知らせも全避難所に配っています。

未曾有の体験をケーススタディにし、次につなげるということ

J:まだ余震があるし、2000回を超える余震があったと聞きます。子供たちの恐怖心やストレスに関してはどうケアされていますか?

K:仙台市さんの「幼児健診のこころのケア」というアンケートを基に熊本市でも同じように実施しています。幼児健診の場面でお母さんの思いやお子さんのご様子はしっかり保健師がお話を聞きます。アドバイスできる部分はしていく。でも、さらりと流すところは流す。人には自然治癒力があるから、最初はすごく不安が高いお子さんでもだんだん収まってくること、また、つらい体験を無理に掘り起こすことはよくないことも教えていただきました。仙台市さんがずっと取っていらっしゃるデータを見ると、確かに1歳半とかまでは記憶がまだ定かじゃないから、不安がすーっと下がっていく。逆に記憶が鮮明な親の不安が伝播するので、親御さんが不安がらないようにするようなサポートをしていかれたらいいですよと。その話で、みんなちょっと安心したところなんです。

J:お聞きしていると、やっぱり近年多発しているいろんな震災が、全部ケーススタディになって、次に伝わっているんですね。

K:その通りです。それで想定外の体験を臨機応変に対応できていくと思います。今回、いっぱい失敗したこともあるので今後に活かしていかないと。今回、うちで経験した若手の保健師たちが、今度何かあったときは、第一線で支援に行くと思っています。

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