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かくれ脱水コラム

コラム
更新日:2017/9/4
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アマチュアサイクリストに役立つ「トレーニングにおける脱水対策」

アマチュアサイクリストに役立つ「トレーニングにおける脱水対策」

自転車のブームが続き、いつかはロードレースを! と、本格的なトレーニングをするアマチュアサイクリストも増加の一途です。しかし、そこには脱水へのリスクがひそみ、トレーニング中の適切な脱水対策を怠ると、熱中症への進捗はもとより、公道での事故による生命の危険も考えられます。

かくれ脱水JOURNALでは、増え続けるアマチュアサイクリストに必読のコンテンツとして、暑い季節に知っておきたい、確認しておきたい、「トレーニングにおける脱水対策」を提供します。ご自身が本格的なロードレーサーであり、レースドクターとしても活躍する富和清訓委員と、タレント・モデルとしてご活躍されながら、本格的なヒルクライムレースにも参加される日向涼子さんの対談で、自転車のトレーンングにひそむ脱水リスクとその対策・対処を確認し、日頃のトレーニングにお役立てださい。

対談:富和清訓 委員(南奈良総合医療センター 整形外科)、日向涼子(モデル サイクリスト) 撮影協力:株式会社モンベル

自転車トレーニング中の脱水・熱中症リスク

  • 心肺への強い負荷
  • 追い込み時、休憩をとらない
  • スピード疾走からの集中持続
  • (屋外)直射日光や道路上での放射熱
  • (室内)熱がこもりやすい環境・壁や天井からの輻射熱

自転車トレーニング中の脱水・熱中症対策

  • 休憩をとる
  • ウォームアップや前後のストレッチ
  • 朝練では朝食を摂る(無理な場合、バナナと経口補水液など)
  • いつもと違うと感じたら止める
  • 汗の気化を促進する機能性ウェア
  • (屋外)日中を避け、朝夕夜の時間利用・暑さ指数「WBGT」の参照・ボトルゲージ+背中のポケットに水分(スポーツドリンクや経口補水液)・練習コースでの水の在り処のチェック
  • (屋内)窓を開け、扇風機などで風の対流を・近くにスポーツドリンクや経口補水液を置く

自転車トレーニング中には脱水・熱中症のリスクがあります

富和委員、ご専門の立場から自転車競技における一般的な身体へのリスクについて教えてください。

富和

富和 自転車競技は心肺機能にすごく負荷がかかるスポーツです。自転車競技が盛んなヨーロッパでは、最も危険なスポーツの一つと言われるほど。大きな怪我を招く落車のこともありますし、心肺に極度の負担をかけるために突然死に至ることもプロアマ問わず結構多いのです。その原因の一つとして、やはり脱水症というものが挙げられています。
脱水症というのは激しい運動時の発汗などで、水分、ナトリウム、カリウム、カルシウムなどのミネラルが失われることで発生し、いろんな症状が出てきます。筋肉がけいれんしてしまったり、体温が異常な温度に上がってしまったり、意識がもうろうとしてしまったり。これは熱中症の初期症状と同じで、脱水症と熱中症が同時に起こることもあるのです。

自転車で屋外を走っている時の意識障害は、そのまま事故にもつながり生命の危険に直結します。

日向 じゃあ、熱中症っていうのは、その脱水症が起きてから発生するんですか。

富和 その原因のひとつに脱水があるということ。例えば、運動によって身体の熱が異常に上がってしまうと身体は発汗によって熱を下げます。しかし、脱水状態で水分がなければ発汗ができない。体温調節が出来ないために熱中症へと進行するわけです。ですから、脱水を防ぐことによって熱中症へのリスクが減るとも考えられるのです。

日向 身体から水分を失う量というのはどうでしょうか?

富和 失う水分量は個人によって異なりますが、私の経験やプロの選手からのヒアリングからだと、選手は安定した走行をするために、気温が25度ぐらいで1時間に500~1,000mLぐらい経口補水液を補給していたはずです。その分、失われているともいえますね。

屋外トレーニングに潜む問題とは?

日向さん、屋外トレーニングは、日頃どのようなトレーニングをされていますか?

日向

日向 私自身はヒルクライムレースという山の麓から山頂までのレースなので、ロードレースの人ほど長距離を長時間走ることはないんですが、屋外でのトレーニングで追い込む場合は、それでも3~4時間、長いと6時間以上は乗っています。本当にレースの試走っていう意味ですとまあ1時間ぐらい。短時間・高強度。口でハアハア息をするので喉がとにかく渇くんです。だから水分は、あっという間になくなっちゃいます。昨日も上りの追い込みをやったんですけど、1時間ぐらいのコースで、登ってまず1本(500mL)飲み切り、下ってまた補給して、でまた登ってまた1本という具合。やっぱり1L以上は絶対に飲みますね。

富和 飲んでるのは経口補水液、水?

日向 普段はスポーツドリンクです。どうしてもコンビニで手に入るものになるんです。ヒルクライムのトレーニングで、山の中に行ったときに困るのが、自販機がない山もあるということです。一度、あるイベントをやっている山があって、100kmくらいのコースですが、そこを試走したときに、途中にコンビニはもちろん自販機もない状態でとても焦ったことがあります。

富和 そりゃ怖い!恐怖ですね。自分が走る所に、どこにお店があるかなってのも本当は調べておくべきなんです。なかなか出来ないことですが。ただ、日向さん、ボトルを2本以外に、シャツの後ろポケットには入れていなかったのですか?

日向 背中のポケットにはウインドブレーカーを入れていました。他には自販機用の小銭を入れるジップロックみたいなやつと、スマホとっていう感じです。

富和 夏のトレーニングでは背中のポケットにもう一本、あるいはトライアスロンのようにボトルケージをもうひとつ多くつけることも考えていいかもしれませんね。

できるだけ活用したい暑さ指数について

暑さ指数

富和 経験で言うと、アスファルトのクルマのレースコースを周回するような真夏のロードレースでは、すごい人数の脱水症の選手が医療班にきます。ある8月のレースでは、2日間で数十人の対応をしたこともあります。
トレーニングでもいちばん気をつけるべきだと思うのは季節と時間帯です。8月の日中に行うのは特に慎重に対応するべきですね。

日向 夏に屋外で練習するときっていうのは、暑さ指数はやっぱり意識したほうがいいんでしょうか。

富和 日中、指数は上がりきっていると思うんです。環境省が出している暑さ指数「WBGT」の行動指針によると、夏の日中では「運動を中止すべき」という状態のときもあります。逆に、暑さ指数の下がる時はというのはまあ…。

日向 朝夕ということですね。

富和 そうです。朝夕です。一番暑い危険なときを避けるっていうのは、事前にできる脱水・熱中症予防になります。

屋外でのトレーニングは何時、どのようにすればいいか?

できるだけ活用したい暑さ指数に屋外でのトレーニングは何時、どのようにすればいいか?

富和 朝練もいいと思います。ただ朝は、走る前に何か補給して欲しい。人は、寝てるとき身体から水蒸気で水分が奪われています。起きたらすぐに利尿します。朝は軽い脱水状態なんです。そのままで外へ出て運動するのは危険です。日向さんは、普段、練習する時って何時ぐらいにやられるんですか。

日向 私は、あんまり日差しが強くない時間。できれば10時ぐらいに終えたいので、そこから逆算してこのコースだと何時間かかるかを考えます。4時間かかるなと思うと6時にスタート。大体、日の出直後から走り始めるのが、私の中の決まり事というか。

富和 そういう場合に、朝の食事は?

日向 走りはじめる3時間前とかがベストだと聞いていますが、さすがに6時の3時間前からは食べられないので、バナナとかにしたり。もう4時には起きてゆっくりとバナナを食べ、ストレッチをして6時には出る感じです。

左上:風を受けて走るウォームアップ 右上:小休止と経口補水液の補給 左下:スマホで暑さ指数の確認 右下:練習後のストレッチ
左上:風を受けて走るウォームアップ 右上:小休止と経口補水液の補給 左下:スマホで暑さ指数の確認 右下:練習後のストレッチ

富和 いいですね、ストレッチまでしていくっていうのも。やはりトレーニングでも、なるべく朝食とかはしっかり摂るのがベスト。予防の観点から言いますと、一番いいのはもちろん主食、主菜、副菜、果物、乳製品を食べてから行くのがいい。でも無理がある場合は、バナナは手っ取り早くミネラルも糖分も入っている。あとエネルギーがとれます。加えて、起床してすぐは脱水ぎみですから、走る前に経口補水液などで水分とミネラルを補うこともいいでしょう。自転車ってエンジンは人間。手入れをしガソリンを入れないとエンジンが気分よく回転しない。ダイエットするために炭水化物を減らして自転車に乗る人もいるんですけども、それをしてしまうと低血糖など危険なことを招くこともあるからお勧めできませ燃料を積んで走るっていう考えを持たれたほうがいいんじゃないかと思います。それがあらゆる予防につながるわけです。

日向 自転車の場合は、やはりスピードがすごく速いので、何かあったときに本当に大事故になってしまうことがあります。ですから準備をちゃんとしておきたいという思いがあります。食べないで行くとかって、私は逆に怖いくらいです。

日向

富和 それから、脱水とは直接関係ありませんが,外でのトレーニングは、単独で走ることは、やめたほうがいいと思います。

日向 私は、結構単独で走ることが多いですね。

富和 実際にはそうですね。でも、やはり1人で走ることはできるだけ避けたほうがいいと思います。それは体調が悪いとき、例えば、誰かに助けてもらうことも大事だし、スピードが結構出ますから、谷底などへ落ちたときに助けてもらうのも大事だし。あと1人だと、どうしても自分のペースにばっかり合わせてしまう。

日向 あります。人と走ったほうが速くなると言うのは感じていました。プラス安全面で、というわけですね。

室内トレーニングに潜む問題とは?

日向さん、室内のトレーニングでは他にどのようなことをされていますか?

日向

日向 普段は家の中でローラー台トレーニングをメインでやっています。側に1Lぐらいの飲み物を置いたり、スポーツドリンクや経口補水液を何個か用意していつでも手に取れる状態にして。

富和 素晴らしいですが、家の中ではちょっとだけ落とし穴がある。それは鬱(うつ)熱です。

日向 鬱熱?

富和 はい。日向さんは、家の中でローラー台トレーニングをしているとき、扇風機や換気扇を回していますか?

日向 私は、実は扇風機はつけない派っていうか、窓全開でやってるんです。というのも、扇風機の風って、肌が乾燥するので、ちょっと美容的に避けています。

富和 窓全開といっても、通気・通風に注意すべきなんです。鬱っていうのは鬱病の鬱みたいに閉ざしてしまう、熱を出さないということです。激しい運動で汗をかくと身体から熱が奪われますけども、とくに夏の自転車のトレーニングの場合、室内では屋根や壁、家具からの輻射熱もあり、たとえ窓を開けていても風の対流がないと、身体を冷やすのが間に合わないんです。水分やミネラルは室内だと目の前にあれば補給できるけれど、体温が上がったままでいると、頭痛やぼーっとしたり、熱中症の危険が増します。扇風機も、身体を冷やしすぎる直風じゃなかったらいいんです。風が外気と室内を通気してればいいので。

日向 風を直接当てるんではなくって、外気と内気を対流させるっていうことですね。

富和 自宅で練習する場合は、身体を冷やすために通風するトレーニング環境を整えたほうがいいでしょうね。

富和委員、ウェアについてはどうですか?

ウェアについてはどうですか?

富和 鬱熱のはなしと一緒ですけど、ウェアは汗を早く吸収して早く発散するのが大事です。とくに夏は速乾性のものがいいでしょう。最近の機能性ウェアの素材にはいいものが出ていますから、自分にあったものを選んで着用するといいと思います。

日向 すごく通気性のいい物がでていますね、汗を蒸発させるもの。ただ、私は加えて日焼けをしたくないので、腕をアームカバーで隠しています。もちろん美容のためでもあるんですけど、普通に体力を消耗しないために。そのうえで、季節に合ったもので、自分が一番心地よく過ごせるウェアを着ています。

富和 とてもいいことです。

脱水・熱中症を避けるための飲みどきは?

富和委員、トレーニング中、「あ、今飲み時だ」とか、「早く補給しなきゃ」と思わなきゃいけないポイントはありますか?

富和委員、トレーニング中、「あ、今飲み時だ」とか、「早く補給しなきゃ」と思わなきゃいけないポイントはありますか?

富和 ポイントは、渇いたと感じるより前に、「今、余裕あるな」っていうときに水分を摂ること。たとえば、ヒルクライムだと、ちょっと坂が緩くなったときだと余裕できますね。そんなとき追い込む前に、ちょっと水分を摂っておこう、と考えるほうがいいと思います。自覚症状は、出たときには遅いって言われてるんです。でも例えば、なんかいつもの練習と違うな、なんかいつもの練習よりも発汗の量が多いかなって自覚できるときとかには、心がけて水分とミネラルを摂ることも大事。ハートレートモニター付けたりしてます?

日向 私は、追い込むときは付けないです。追い込まないときは付けますけど。

富和 追い込むときは脈拍数がガーンと上がってると思うんですけど、ハートレートモニター付けてる人は、追い込むから心拍が上がるということと、脱水になってるから心拍が上がっているということの両方を考えないといけないんです。脱水になると、心臓が遠くまで血液を送るためには少ない水分を早く送ることになり脈拍数が一気に上がるんです。いつもと同じペースで走ってるのに、脈がいきなり速くなるなっていうのは、もう脱水になってるんだと思います。

日向 水分に関しては、基本的に私、早めに飲みますね。飲み過ぎだよって言われちゃうほうなので。

日向

富和 早め、早めというのはとてもいい。

日向 ただ、早めすぎてトイレが近くなっちゃって恥ずかしいっていうときもあるので、ちょっと女性としては気になるところです。練習中だと、先ほど先生が言われたようなハートレートモニターとか持っていない人であっても、なんとなく余裕が自分の中でないと、いつもより脈拍数が上がってるかな、とかって思ったときは、パッと練習やめたほうがいいとか、あるいは水を飲んで小休止するとかっていうふうな対応を取れば良いってことですか。

富和 そう思います。多分、それでやめれば、負荷も下がるんで脈は落ち着いてくると思うんです。負荷をやめたのに脈が上がってるとなると、脱水になってるから脈が上がってるっていうことになりますよね。それはとても危険です。

日向 脱水で心拍が上がるっていうのは、全く知らなかったです。

トレーニングの後はどうでしょうか

富和

富和 まだ身体が火照ってますよね。それは水分を途中に摂っていても軽い脱水状態になっているということ。プロのロードレースチームは栄養士が食事等で対応しています。厳しい練習が終わった後は水分と共に、主食、主菜、副菜、果物が絶対に付く。いろんな食べ物に電解質は入っていますし。アミノ酸や良質なタンパク質を摂るのは翌日のためのコンディション作りにもいいと思います。

ただ、栄養士が付いてない一般の人は、やっぱり経口補水液などの補助を借りて対応するのは、一つの方法だと思います。
後は飲酒は控えめに。やはり利尿作用もありますし、トレーニングで追い込んでいる場合は夜のうちの脱水との関係があります。


図

日向 今日は勉強になりました。まず、脱水が熱中症につながるということも知らなかったし、その上で室内でのトレーニングで、扇風機で通気を生むことが体温上昇を予防することも知れてよかったです。実は扇風機を持っていないんですが、買わなくてはいけませんね。

富和 換気扇でもサーキュレータでも、通気を生むものがあればいいんです。食事、トレーニング前後のストレッチなど、見事にセルフケアされている日向さんが、トレーニング中の脱水にもいま以上に気配りされるようになれば、ヒルクライムの成績アップにもつながるでしょう。自転車を愛好する皆さんにも、ぜひ参考にしていただきたいと思います。

日向・富和 本日は有り難うございました。

日向涼子(ひなた りょうこ)
モデル。サイクリスト
モデルでありながら2012年の「ツール・ド・八ヶ岳」初参加での入賞以来,数多くの大会で入賞・優勝を果たす。多くの大会にゲストライダーとして招かれる他、サイクリングイベントでのトークショーも多数。自身のブログは自転車カテゴリーでアクセス数トップ。著書に『坂バカ式 知識ゼロからのロードバイク入門』など
富和清訓(とみわ・きよのり)
南奈良総合医療センター 整形外科
大学時代にロード&トラックレースを始め、JICF(日本学生自転車競技連盟)に所属しレースに参戦。ツール・ド・北海道2006(市民レース)で優勝。現在はUCI(国際自転車競技連合)公認レースなどのレースドクターとして活躍。日本で数少ないUCI公認のエリート・ナショナル・コミセールであり自転車ロードレースの審判・運営にも携わる。
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