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かくれ脱水コラム

コラム
更新日:2017/8/18
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暑い季節の屋外スポーツイベント・熱中症対策読本

暑い季節の屋外スポーツイベント・熱中症対策読本

かくれ脱水」JOURNALでは2017年、全国12カ所で開催される、カヤック、ロードバイク、山歩き(ハイク)という3つの異なる屋外スポーツを体験する『SEA TO SUMMIT』に注目し取材を続けています。今回は、『佐渡 SEA TO SUMMIT』にゲストランナーとして参加された、作家で「サラリーマン転覆隊」隊長本田亮氏の実体験と共に、屋外スポーツにひそむ脱水リスクとその対策をまとめました。
暑い時期に増えるアウトドアスポーツイベントへ参加する方々の脱水による事故や熱中症を防ぐ一助となるための基礎的な知識です。夏の屋外スポーツを愉しむ前にどうぞ一読してください。カラダを脱水リスクから守り熱中症を防ぐ一助としてお役立てください。

監修:南奈良総合医療センター 整形外科 富和清訓
取材協力:株式会社モンベル

屋外スポーツイベントの代表的な脱水リスク — SEA TO SUMMITから —

・カヤック    水面の反射 輻射熱 汗の蒸発を気づかない
・ロードバイク  運動負荷の高さ 高い参加者の競技レベル 競争意識 気温上昇 輻射熱
・ハイク     輻射熱 気圧低下による水分蒸発 天候の急変 雨上がりの湿度からの鬱(うつ)熱

佐渡 SEA TO SUMMIT コース

佐渡 SEA TO SUMMIT コース

本田隊長、出発前に夏イベント「SEA TO SUMMIT」をどう捉えていましたか?

本田隊長、出発前に夏イベント「SEA TO SUMMIT」をどう捉えていましたか?

本田 いままで西表島の山を横断して海をカヌーで戻ってくるとか、ニュージーランドで山を自転車で登ってカヌーで下るとか、「サラリーマン転覆隊」では、いってみれば『SEA TO SUMMIT』をやっているようなものだった。それで、ゲストに呼んでいただいたときは、それほど不安はなかったんだけど、レースのように走るのは初めてだから、それは少し不安だったかな。

レースは7時出発、最初が隊長の得意種目カヤックです。カヤックに乗っていて感じるリスクはありますか?

レースは7時出発、最初が隊長の得意種目カヤックです。カヤックに乗っていて感じるリスクはありますか?

本田 朝は、宿の朝食がまだ準備できていなくておにぎりを食べて出発。出発前は、水はなるべくたくさんもって、支給されたスポーツドリンクや経口補水液もカヤック上で飲みました。みんなかなり訓練している人間ばかりだから、どうかと思ったけど、5㎞のカヤックは心地よく、着順も2着だったんだよね。
ただ、多くの旅先での経験からいえることだけど、カヤックで海上にいる時は喉も身体も渇く感じがします。『SEA TO SUMMIT』の日は朝から気温が高くなったこともあるけど、海の反射で目に光が入ってくるし、潮風が身体から汗を持っていくような感じがした。

カヤック:水面の反射 輻射熱 汗腺からの水分蒸発を気づかない

『SEA TO SUMMIT』の場合、カヤックは 5~7㎞ 程度なので少なくとも1時間程度は水上にいることになります。その間、水上はさえぎる物が少なく風も素通り、時には気持ちの良いくらいのこともあるのですが、その間に汗腺から分泌された汗の水分が体表から蒸発していきます。実は、汗をかいている気がしないまま、体表から水分が奪われていくリスクが高いのです。

また、水面からの反射((照り返し))によって輻射熱による体温上昇のリスクも大きくなります。太陽光線には遠赤外線が含まれます。太陽光が暖かいのは遠赤外線の効果です。それが水面から反射して体温上昇につながる。それが知らず知らずの間に進行してしまうのが恐ろしいこと。
よく晴れた日は心地よいですが、輻射熱が大きくなると覚えてください。

本田隊長、佐渡のバイク25㎞走は、大変でしたか?走行中の水分補給についても教えてください

本田隊長、佐渡のバイク25㎞走は、大変でしたか?走行中の水分補給についても教えてください

本田 このコースは自転車が辛いといわれていたから、どうか、と思っていたけど、実際に大変だった。13%の傾斜(ヒルクライムレースのようなハードな坂道)が続く非常にキツいコース。気温も35℃くらいになったと思う。僕は、無理せず、すぐに自転車を降りて押しました(笑)。

持っていた水分、経口補水液はボトル一本を飲みきりました。圧倒的に普段飲むとあまり美味しくないのが経口補水液。今回、 飲んだら美味かったね。 身体が求めていたのかな。

また、途中でスタッフの方々にいただいた凍らせたドリンクがありがたかった。吸収についてなどはよくわからないけど、やはり冷たいものは身体の火照りが癒されるように思います。いつも思うことですが、自転車は坂道が続くと喉が本当に渇くし、身体は疲れる。ずっと漕ぎっぱなしで、汗が滝のようになるし、ハードなスポーツだと思います。

自転車のロードレースについて脱水リスクを

イベントであっても、自転車は趣味人口が多く出場者のレベルが高いために、多くの人が一緒に走ると競技の感覚になってしまいがちです。つい自分を追い込んでしまう。本当は、ハートレートモニター(心拍計)で自分の限界がどこにあるのかを知っておく必要があります。オーバーヒートを自分から招くことは避けるべきです。そのためには、競技的なものに出る以上、普段から練習で負荷をかけ、ある程度は自分を追い込んで限界点を知り、そのときの心拍数を知っておく必要があります。

最後のハイクと、約4時間半のレース後の身体について感じたことを教えてください

ついついお酒を飲み過ぎる!?

本田 自転車で凄くふとももを使っていたから、最初は脚が前へ出ていかなかったけど、4.5㎞のハイクは高低差が少ないコースでわりとラクでした。いただいた水分とあんぱんを食べながら、美しい佐渡の景色を愉しむことも出来た。

ただ、終わってからが大変だった。翌日まで調子が戻らなかったな。身体が火照ったままで渇いた感じ。お風呂に入っても身体がほてっていてお湯が熱く感じて湯船につかれない。結局水浴びでしたね。経口補水液、ミネラルウォーター、お茶など、身体が欲する水分をいろいろ飲みました。僕は牛乳が好きで、激しいスポーツの後は牛乳を飲みたくなる。この日も終わって一本飲みましたね。

標高が高いところでは太陽光線、気温・気圧の変化が問題になります。太陽光線は遠赤外線による輻射熱。気圧の変化では、体表から水分が蒸発しやすくなるという変化が見られます。

気温は、逓減率から考えると100mで約0.6℃下がるので1000mの標高差があれば、6℃程度の変化が考えられます。体感温度で涼しくなっているので、競技をしている最中には心地よいかもしれませんが、山岳の天候は変わりやすいことも考慮しておくことが大切。雨が降ってカラダを濡れたままにすると、体が冷える。体温を保つことも考慮しなければならない。必要に応じて重ね着は大切な手段だと思います。また雨上がりだと湿度が高く汗が蒸発しにくい環境となり、身体から熱を放出しにくくなることで、体温がこもって鬱(うつ)熱が生じ、熱中症初期のような症状になることもあります。

「身体に素直に、我慢しないで水分を摂ろう!」本田隊長からの一言!

「身体に素直に、我慢しないで水分を摂ろう!」本田隊長からの一言!

自分で飲みたいと思うものが、レース前、レース中、終わってから、と違うような気がする。都度、身体が求めるものを素直に飲んでいれば、身体が受け入れる感じがしますね。それと、専門家ではない僕が言えることとして、トップレーサーの競技ではないのだから、絶対我慢をしないこと。ちょっとでもノドが渇いたら水分を摂る。キツかったら歩く、あるいは自転車を降りて押す。スポーツイベントでのコツは、ぜったい無理をしない。身体に素直になるということではないでしょうか。

  • トレーニングで暑さに馴れ食事の管理を
  • 汗管理の出来るウェアを選ぶ
  • 水分は摂れるときに余裕を持って
  • いつもと違う感覚に素直に注意し、早めの水分補給
  • イベント会場入りは余裕をもって
  • 日頃から日焼けをひかえる!?
  • 前夜はアルコールを控え、終わっても水分補給

①トレーニングで暑さに馴れ食事の管理を

まず、シーズンインの時期の暑熱順応があります。日ごろの練習も、競技スキルのアップと共に、暑さに馴れるための要素があるのです。トレーニング時には、朝食を必ず摂り、疲れたカラダには、主食 主菜 副菜 果物 乳製品という基本的な献立を守って栄養管理をしておくことです。

②イベント会場入りは余裕をもって

会場まで無理なスケジュールで向かうことは戦績を落とすだけでなく、体調を乱すことにもなります。キャンピングカーなどは別ですが、基本的に車中泊や、夜行バスでの前夜入りなどは止めるべきです。会場には余裕を持って入り、当日の朝食も必ず摂ってください。

③汗管理の出来るウェアを選ぶ

熱中症を防ぐために高機能なウェアがたくさん登場しています。汗を吸収発散することで放熱させる。つまり鬱(うつ)熱の予防を目的としたものは自転車競技のウェアに有用です。山岳では防水・透湿性・通気性というのが重要な機能になります。ウェア内の蒸れが鬱(うつ)熱の原因になるからです。

④日頃から日焼けをひかえる!?

日ごろからきちんと日焼け(光老化)を防いでおくことが大切。皮膚のコンディションが悪いとそれだけ皮膚のうるおいがなくなり、皮膚が乾燥しやすくなる。皮膚が乾燥しやすい状態だと、本人が発汗に気づきにくくなります。発汗に気づかないと、ついつい水分補給が遠のくことにもなります。また過度な日焼けでは、皮膚が腫れて浮腫みます、酷くなると水膨れ(水疱)にもなります。この時、血管内の水分が皮膚の直下(皮下)に誘導されるため血管内は脱水傾向になる危険性があります。血管内の脱水が進行するとやがては全身症状を招くような脱水症に陥ってしまう恐れがあります。

⑤水分は摂れるときに余裕を持って

プロのロードレースの場合、選手は1時間に500mLから1Lの大量の水分を摂ります。 もちろん電解質も同時に摂ります。 それだけカラダの水分が失われるのです。スポーツイベントでは、水分の摂取量は距離や天候にも左右されるので規定できませんが、イベントに参加する時の最低限の基本として以下のことは覚えておきましょう。失われるのは水分と電解質。補給するのは電解質を含んだ水分。そして「今余裕あるな、よし飲んでおこう」という感覚を大切に早めに摂ることです。

⑥前夜はアルコールを控え、終わっても水分補給

前夜は体調を乱すような飲食を控えること。アルコールを取りすぎた翌日は特に脱水に注意してください。朝のカラダは脱水ぎみですので、アルコールの利尿作用が脱水状態に拍車をかけています。また、イベントで大汗をかいた後は、水分補給をしていてもカラダは脱水ぎみだと考えてください。打ち上げなどでのアルコールは程々に。まずは、水分と共に、食事などから失ったエネルギーと電解質を摂ることが大切です。また、イベント前には生ものは控えたほうがいいでしょう。もし下痢を誘発した場合は、脱水状態を招きます。

⑦いつもと違う感覚に素直に注意し、早めの水分補給

運動中に、あれっいつもと違うな、という感覚があるのが一つのサイン。そのとき脈を測ると、急な脈拍上昇が客観的な評価になるかもしれません。体内の水分が失われると、循環血液量も減少します。そんな中でもカラダの隅々まで血流をいきわたらせようとして心拍数が上昇するのです。こうした危険領域にならないために、早めにこま目な水分摂取・ミネラルの摂取が大切になってきます。

本田亮(ほんだ りょう)
本田亮(ほんだ りょう)
1953年生。日大芸術学部卒。元電通エグゼクティブ・クリエーティブ・ディレクター、作家、環境マンガ家、カヌーイスト。世界中の海山川でバトルに挑戦してきたサラリーマン転覆隊の隊長。ケニアでの結婚、パリダカールラリー参戦、世界の川下りなどの体験は奇想天外。現在はフリーのクリエーターとして活動する傍ら、多くの企業で会社生活を3倍楽しむワーク&ライフバランスの講演を続けている。著書に「ママチャリお遍路1200km」(小学館)、「僕が電通を辞める時に絶対伝えたかった79の仕事の話」(大和書房)など。
富和清訓(とみわ・きよのり)
富和清訓(とみわ・きよのり)
南奈良総合医療センター 整形外科
日本DMAT隊員
大学時代にロード&トラックレースを始め、JICF(日本学生自転車競技連盟)に所属しレースに参戦。ツール・ド・北海道2006(市民レース)で優勝。現在はUCIレースなどのレースドクターとして活躍。
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