かくれ脱水JOURNALは熱中症、脱水症対策の最新情報をお届けする情報サイトです

かくれ脱水コラム

コラム
更新日:2017/9/6
View251
渡航中は脱水の危険がいっぱい。 自分で予防する知識と新習慣を!

渡航中は脱水の危険がいっぱい。
自分で予防する知識と新習慣を!

気をつけていても旅行にトラブルはつきもの。その原因のひとつが脱水による健康面のトラブルです。実は、海外へ渡航をすることは、脱水しやすい状態に身を置くということ。飛行機の機内は脱水環境といえる場所であり、旅先での行動や飲食が脱水リスクを高めていることがわかっています。渡航時は脱水になりやすいと理解し、移動する機内と、旅先において普段とは少し違う習慣を身につけること。渡航時の脱水リスクとその対策について、渡航医学の専門家である大越裕文先生に伺いました。

監修:大越裕文(おおこし ひろふみ) 医療法人社団 航仁会渡航医学センター 西新橋クリニック 理事長

渡航の脱水リスク

(機内での脱水要因)

  • 飛行機内の乾燥
  • 飲酒
  • トイレ我慢

(旅先での脱水要因)

  • 暑熱下での行動・スポーツ
  • 移動時のトイレ我慢
  • 旅行者下痢症
  • 飲用水の入手困難
  • 飲酒

飛行機の中は乾いている。旅の最初と最後に最大の脱水リスクが

そもそも、飛行機の中ではみんな軽い脱水状態?

そもそも、飛行機の中ではみんな軽い脱水状態?

そもそも、高度1万メートルを飛ぶ飛行機の中は湿度が低く乾燥した脱水しやすい特殊な環境です。ほとんど湿気のない機外の空気をエンジンルームからとり込み圧縮して機内に入れているためですが、長時間のフライトになると機内の湿度が10〜20%まで低下してしまいます。

フライト中の機内で自然な呼気などから失われる水分(不感蒸泄)を計測する実験として、大塚製薬が日本航空の協力のもと行った、アメリカ便のジャンボ機を借り切ってボランティア40名余の水分バランスを確認したものがあるのですが、それによるとだいたい1時間で体重1kgあたり2mL、体重50kgの人は1時間に100mLの水分が失われることが分かりました。これは非常に多い水分量。それに加えて長いフライトではトイレで大量の水分を出しているわけです。渡航の行き帰りに、そうした環境で何時間も過ごすということを理解しておきましょう。

また、機内は低酸素です。富士山の5合目ぐらい。心臓は低酸素になると鼓動が早くなります。機内に居ながら、軽い運動をしたような状況になるわけです。いろんな病気と同じように高齢者、小児、妊婦、あとは慢性疾患、とくに血管系の合併症が多いような糖尿病などの方は、機内での脱水リスクが高いと思ってください。脱水状態を放置しておくと、静脈に血栓ができていわゆるエコノミークラス症候群や冠動脈の血流が悪くなり、狭心症、心筋梗塞などのリスクも高まります。

ついついお酒を飲み過ぎる!?

ついついお酒を飲み過ぎる!?

飛行機の中では、普段あまり飲まない人でも、ついついお酒を飲んでしまいがちです。機内の環境下での脱水に加えて飲酒による利尿作用が起こると脱水リスクは高まります。では水分補給すればいい、ということになりますが、なかなか水分補給が間に合わないもの。最近は、キャビンアテンダントが、お酒を出す時に水分を提供するようになっていますが、それでも間に合いません。できれば機内での飲酒は控えめにすることをお勧めします。

となりの席に人が寝ている、トイレに行きづらい

となりの席に人が寝ている、トイレに行きづらい

たとえば、エコノミークラスの一番奥(窓側)の人だったら、たくさん水を飲んでトイレへ回数多く行くのは嫌だと思うでしょう。寝ている人がとなりにいたらなおさらです。すると水分を控えてしまう。他人に迷惑をかけるとことを厭う日本人の特徴のひとつですが、高齢者や女性にとくに多い、機内で脱水になる要因です。

水があっても「飲み水」がない。途上国への旅行の注意点

暑さという環境リスクと旅先の行動リスク

暑さという環境リスクと旅先の行動リスク

機内でついフリーのお酒を飲むことが脱水リスクといいましたが、渡航先においても行動面からのリスクがあります。産業医としての経験から言うと、東南アジア渡航では、ビジネス・観光に関わらず、お酒を飲む機会や、ゴルフなどのスポーツをすることが多いようです。とくにビジネスだと、「よく来た、よく来た」と宴会が続くことがある。宴会が終わったらゴルフが次に来るというパターン。これは、お酒を飲み過ぎて脱水しているところに炎天下でゴルフをしてしまうということ、こういう最悪のパターンがままあります。脱水しやすい環境に行って脱水しやすい行動をとっているということです。

旅行者は下痢しやすい

旅行者は下痢しやすい

途上国だと特有の疾患もありますし、発熱や下痢症も多い。下痢は水分と共に電解質を著しく失う脱水状態につながります。一般的に、感染症でなくとも、環境の変化や不慣れな食事などから、渡航中に下痢を起こす人はとても多いため、旅行者下痢症という名称で注意喚起がなされています。(病名ではない、症候群みたいなもの)

問題は、途上国の場合、「安全な水」がどこにでもあるというわけではないということ。昔はホテルの水でも、飲んだら下痢をすることがありました。最近はコンビニが何処にでもあって安全なミネラルウォーターが買え、ずいぶんよくなってきていますが、それでも途上国では都心を離れると、路端の屋台で売っているような水しかないことがあります。こういう露店は避けたほうが無難。たとえボトルに入っているミネラルウォーターでも避けたほうがいいでしょう。水道水をボトルに入れてミネラルウォーターといって売っている場合もあります。やむを得ず購入する「水」ならガス入りのほうが安心です。

「そこのトイレ、綺麗ですか?」が脱水につながる

「そこのトイレ、綺麗ですか?」が脱水につながる

水分摂取を我慢してしまう要因として、移動中にトイレが探せないこともあります。欧米でも、都心を離れると本当にいきなり片田舎になることが多いのです。トイレに行けない環境で、しかも、やっとトイレを探し当ててても、日本人の感覚だと衛生面から、ちょっと無理、と感じることが多々あります。高齢者や女性はとくに目的地のホテルやゴルフ場までトイレを我慢するために、水分を我慢してしまうのです。そういうトイレから脱水への連鎖が旅のベースにあるのです。

渡航の脱水対策

(機内での脱水要因)

  • 機内での水分補給 1時間に100mL(体重1kgあたり2mL)
  • トイレを我慢しない
  • 食事を摂る
  • 飲酒を控える

(旅先での脱水要因)

  • 安心できるミネラルウォーターなど「水」の常備
  • 経口補水液(パウダー、ゼリーなど)の携帯
  • トイレの確保と飲酒機会での水分補給

経口補水液を側に置く。これが旅の新習慣

安心なミネラルウォーターは常備すること

安心なミネラルウォーターは常備すること

旅行中は、安心して飲める水分を自分で持って歩かなくてはいけない。これを旅行中を通じての習慣にする必要があります。わたしたちは、自身の健康面への責任を自分で予防する知識を得、できるだけ自身の責任のもとで対処する姿勢を持つという意味で「セルフトリートメント」と言っています。

渡航することは、仕事であろうとプライベートであろうと、基本的に脱水環境に行くことだと自覚しましょう。したがって誰もが失った水分を補水するための道具を肌身の近くに持っていたほうがいい。それは、例えば無理のないスケジュールで睡眠をとり食事をちゃんと摂っているのなら、安心できるミネラルウォーターなどの「水」で大丈夫です。そして、ノドが渇く前に飲むことが予防。ノドが渇いたら、それはもう軽い脱水なのですから。

機内では、トイレをがまんしないで、1時間100mL

機内では、トイレをがまんしないで、1時間100mL

機内が脱水環境であることを覚えてください。そして飛行機に乗る前に必ずトイレに行くとか、機内で消灯になるとき、また消灯中にみんながまだ寝ているなと思うときに目が覚めたらそのとき必ず行っておくなど、トイレへ行くチャンスがあれば必ず行って水分を絞り出す。そしてトイレを気にせずに、1時間に100mLを基本に水分を摂る。機内での習慣にしてください。

移動中の機内では、しっかり食事も摂っているのなら補水に「水」でかまいません。しかし、飲酒が過ぎたら利尿作用で電解質も多く失いますから、水分だけでなく何か軽食等で塩分も摂った方がいいでしょう。経口補水液のゼリータイプは便利だと思います。

旅先での新習慣、経口補水液パウダー

旅先での新習慣、経口補水液パウダー
ミネラルウォーターと経口補水液のパウダー

旅先で忙しく動き回り、お酒の機会が続き、熱を持ったり下痢気味になったりしているときは脱水状態になっています。そのときは経口補水液です。経口補水液なら、水分と共に塩分などの必要な電解質がカラダに吸収されるようになっています。

とくに途上国へ行く場合は、水分だけでなく経口補水液のパウダーを、1袋でも2袋でもいいですから、脱水を補正する道具として持っていくことをお勧めします。

海外で具合を悪くしたときは、病院に行くべきですが、これがまた大変です。病院での手続きもですが、途上国だと病院までの道路が混むことも多く、大渋滞に巻き込まれ暑い車内に閉じ込められることもある。そうしたときに、まず自分で脱水症を経口補水液で対処しすることは重篤化を防ぐことにつながります。

欧米では自己治療=セルフトリートメントという考え方が浸透しています。まず知識を貯え、自分の判断で対処することができるほうがいい、という考え方。日本の方々も渡航する先は外国です。最低限、脱水リスクに関してはセルフトリートメントできるようにしてほしいものです。

大越裕文(おおこし ひろふみ)
大越裕文(おおこし ひろふみ)
医療法人社団 航仁会
渡航医学センター 西新橋クリニック 理事長
医学博士 東京慈恵医科大学卒業 ワシントン大学リサーチフェロー 日本航空(株)健康管理部副主席医師 2006年東京慈恵医科大学非常勤講師  2012年 海外法人医療基金 相談担当医
こんな記事もおすすめ!
脱水生活百科

脱水生活百科