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かくれ脱水コラム

コラム
更新日:2016/4/1
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冬の感染症の現状と、家庭でできる予防と対策

ノロウイルスを中心としたウイルスの実態や研究の現状、最新の予防や対策について、服部益治委員長が感染症の専門家と語り合いました。

知っておきたい。
冬の感染症の現状と、家庭でできる予防と対策。

2015年冬の最大の心配事とも言える新型ノロウイルス「GⅡ.17」の流行予想。インフルエンザも12月ころから感染者が増え、翌1月〜2月にピークを迎えます。こうした冬に気になるウイルスの実態をより詳しく知って、日々の暮らしの中で、いっそう予防と対策を実践していただくことを目的に、服部益治委員長が、感染症研究の専門家、矢野一好先生にインタビュー。ノロウイルスを中心としたウイルスの実態や研究の現状、専門家が推奨する最新の予防や対策についてのすぐに役立つ情報について語り合いました。
※本コラムは2014年掲載のものです。

Q1:ノロウイルスの起源について教えてください。

お忙しいところを、お時間をいただき有り難うございます。冬の感染性胃腸炎を引き起こすウイルスの主役はノロウイルス。ノロウイルスの発見は、米国のノーウォークの街といわれていますが、それまでこのウイルスはどこにいたのでしょうか? 具体的に教えていただけますか。

服部益治委員長

A1:1972年の新発見ですが、もっと以前からあった可能性は否定できません。

ノロウイルス発見のルーツは、1968年の冬にアメリカオハイオ州のノーウォークにある小学校で原因不明の胃腸炎の流行があったことに始まります。この原因は、電子顕微鏡による観察によって、これまでに見つかっていなかった新しいウイルスであることがわかりました。ウイルスの名前は、1972年になって地名にちなんで「ノーウォークウイルス」と名付けられました。今の名称であります「ノロウイルス」という名称は、2002年の国際分類委員会で決定された世界共通の呼び名です。

さて、ノロウイルスは、いつからヒトの世界に侵入していたのでしょうか。学術的な確証はありませんが、私は、かなり古くからヒトの世界に侵入していたものと考えています。その理由は、1970年頃の不思議な現象として、「カキを食べると下痢をする」とか、「今年のカゼはお腹に来る」などと言われていました。そして、この時点の食中毒事例では、原因物質不明の事例が、食中毒事例の約半分ありました。今になって思えば、これらの現象の原因は「ノロウイルス」であった可能性が否定できません。

なお、ノロウイルスは、現在のところ「ヒトにしか感染しない」と言われていますので、仮に、動物がこのウイルスのルーツを持っていたとしても、ヒトに感染するように変異するのにかなりな時間を要したと考えます。そんなわけで、ノロウイルスのルーツがどこであったかは不明なのです。

矢野先生

Q2:ノロウイルスの現状と今後のこと。

ノロウイルスはどのような特徴を持っているのでしょう。インフルエンザウイルスのように強毒性に変異を起こす可能性はあるのでしょうか?

服部益治委員長

A2:ノロウイルスは微量で感染。しかも変異するたびに強力に。

ノロウイルスは現在のところ実験室で培養する手段がありませんので、このウイルスの特徴については、まだ詳しくわかっていません。一方で、遺伝子解析の結果によれば、ヒトに感染するノロウイルスの遺伝子型が30種類以上見つかっており、部分的な変異も確認されています。やや大きな変異があったのは、けた外れの流行をした2006年の冬と、やはり大きな流行だった2012年の冬にあったといわれています。その他の疫学的な特徴としては、感染最小単位、すなわち、何個ぐらいのウイルスが体内に入れば感染するかの最小量ですが、10個から100個程度。ノロウイルスに感染した人の糞便や吐物には、100gにつきだいたい1億個のウイルスがあるのですから、細菌類に比べて極めて微量で感染します。

インフルエンザのような変異があるかどうかは、今後の研究成果によってわかってくるものと思いますが、なんといっても、ノロウイルスが実験室で培養できるようになることが重要な課題です。

矢野先生

Q3:感染経路が多様化?

ノロウイルスの感染経路は、年々多様化していると聞きます。まさかと思われる感染拡大もおこっていますが、その具体的な例や多様化を生む要因について教えてください。

服部益治委員長

A3:ノロウイルスは「大量排泄、微量感染」。しかも長生きです。

二枚貝、なかでもカキの生食が最も目立った感染経路といわれていましたが、カキの養殖に携わる方々の努力もあって、今では、ノロウイルスによる食中毒原因の2割程度にまで減少しています。

現在、感染経路として目立っているのは、調理に携わる人がノロウイルスに感染しており、この人が調理した食品がウイルス汚染され、これを食べて人が感染するという、いわゆる「調理従事者由来」です。特異な例ですが、ウイルス感染していた調理従事者が、生活の中で上着の袖口がウイルスに汚染されたことに気づかずにそのまま調理の作業に従事してしまい、結果としてこの袖口が食品を汚染したと考えられる食中毒事例さえ報告されています。

感染経路が多様化する原因は、ノロウイルスが環境条件に対して強い、すなわち、生活環境中で長く感染性を保ったまま生き残るためだと思います。私の感覚では、1か月以上も生き残っている可能性があります。また、先ほど言いましたように、感染に要する最小ウイルス量が非常に少ないということも感染経路の多様化を生む原因となっています。言い換えれば、ノロウイルスは、感染したヒトから何億個というレベルで排出されることと、感染に必要なウイルス量は数個ということにあると思います。要約すれば「大量排泄、微量感染」ということです。

矢野先生

Q4:輸入野菜や果物の洗浄の目安は?

日本には現在、多様な食品が海外から輸入され、いくつかのウイルスの感染経路としても注目されていると聞いています。医師としても気になるところですが、たとえば輸入野菜や果物を食べる場合にもノロウイルスへの注意が必要でしょうか?また一般に、ウイルス感染を防ぐためには「よく洗うこと」「加熱処理」といいますが、例えば生野菜は具体的にどのくらい洗えば良いのでしょう?

服部益治委員長

A4:加熱は85~90℃。貝が口を開ける温度と覚えておく。

ヨーロッパのいくつかの国では、外国産の「ベリー」によるA型肝炎の感染事例が報告されています。汚染源は、栽培する際の農業用水のウイルス汚染や出荷前の洗浄水のウイルス汚染などが考えられています。わが国でも、ベリー類の輸入量が増えておりますので、A型肝炎だけでなく、同じような汚染経路が考えられるノロウイルス汚染も否定できません。

ウイルス汚染は、加熱処理によって防止できます。調理時に85〜90℃のお湯で90秒以上というのが加熱の基本です。二枚貝を加熱するときに口を開けるのが約90℃だといわれていますね。

ただ、生で食するベリー類などの果物を加熱するわけにはいきません。果物のウイルス汚染は、表面にウイルスが付着するだけだと考えられますので、表面の洗浄や消毒でウイルス除去ができると考えていますが、味を落とさずに、となると難しい。消毒効果を減衰させないように工夫がなされ、一定の塩素濃度を保ちながら洗浄ができ、ノロウイルスやサルモネラ、大腸菌などにも効果があることが知られている電解水(次亜塩素酸水)などが候補と言えるでしょう。

矢野先生

「電解水供給装置」アマノ(株)
各種の食中毒細菌やアルコールが効きにくいノロウイルスに有効で、手荒れもおきにくいので、食材・調理器具の洗浄殺菌、施設の衛生管理や手洗いに使用されている。(撮影協力:機能水研究振興財団)

Q5:吐物処理について教えて下さい。

ノロウイルスの感染源となる吐物について、その処理はとても難しいものです。最近、吐物を処理するキットもあると思いますが、そうした準備がない場合に、たとえばビニール袋などで代用ができるのでしょうか?

服部益治委員長

A5:まず浸透性がないもので覆い、防護する。

ノロウイルスに感染したヒトがおう吐した物には糞便中のウイルス量に匹敵するほど多量のウイルスが含まれています。しかも、吐物の飛散範囲は、半径2メートルに及ぶと報告されています。したがって、吐物の処理は、手袋、エプロン、マスク、靴カバーなどで防護して行う必要があります。これらの素材は、浸透性がなく消毒効果がある素材が望ましいのですが、準備できていない場合は、浸透性がないという観点からビニール袋などでも代替できると思います。 吐物は除去作業における防護だけでなく、除去した後の目に見えないほどのわずかな残りカスにも大量のウイルスが含まれていますので、消毒はもちろんのこと、残りカスが乾燥して飛散することを防がなければなりません。消毒の際にもビニール袋などを用いておう吐物の跡を覆うことが重要です。手っ取り早いのは、日頃から「吐物処理キット」などを準備しておくことだと思います。

矢野先生

「ノロウイルス対策セット」イカリ消毒(株)
一般的な吐物処理キットの内容。現在さまざまなメーカーがこうした基本セットで販売している。(撮影協力:機能水研究振興財団)

Q6:ワクチンの可能性と研究の現状。

ノロウイルスにはまだワクチンがありません。最新のワクチン研究の可能性とその現状はどうなっているのでしょうか?

服部益治委員長

A6:まだまだ、容易ではない

ノロウイルスのワクチン開発が遅れている最大の要因は、実験室でウイルスを培養し増やすことができないことにあります。最近では、ウイルスそのものを増やせなくても化学的に合成する方法などの研究もなされていますが、遺伝子型が多いと言われているノロウイルスのワクチンを開発するのは容易なことでは無いと思います。

矢野先生

Q7:経口補水液についてご存知ですか?

当委員会では、脱水状態の予防や対処法に関する正しい知識の啓発活動の一環として、経口補水療法の普及を行っています。これまで、予防に対する啓発は多く行われてきましたが、対処方法についての啓発は行われてきませんでしたが、先生のお立場から、どう思われますか?

服部益治委員長

A7:感染症罹患時の脱水状態への効果的な対処法ですね。

私は、ヒトが生活環境を介して感染症に罹ることを未然に防止する観点から「環境微生物の制御」にかかわる仕事を進めてきました。「経口補水療法」は、おう吐・下痢や発熱を伴う疾患による脱水状態の深刻化を防止・改善するという視点だと思います。感染症に罹患した場合の脱水状態への、効果的な対処法の一つであると認識しています。

矢野先生

Q8:普段の生活の中での予防と対策。

予防について「手洗い」はよく言われます。教えて!「かくれ脱水」委員会として具体的な現実的な目安として「時計を見て30秒洗いましょう」とお薦めしていますが、さらに具体的な提案はございますか?

服部益治委員長

A8:やはり手洗いは、感染症の予防の基本です。

「手洗い」は、ノロウイルスのみならず、さまざまな感染症の予防につながる基本的な対処方法の一つだと認識しています。基本は流水で、手の表、裏、指の間、手首まで洗って、だいたい30秒になる。あんまりこま目にやっていると手がぼろぼろになりますから(笑)、外出から帰ったときなどにしっかりやるといいでしょう。

流水による洗浄だけでも、かなりな効果はあると思いますが、石鹸などの洗浄剤や消毒剤を併用することで一層その効果が高くなります。代表的な消毒剤である次亜塩素酸ナトリウム液は、殺菌効果はあるのですが、手荒れの問題があります。手にやさしい濃度の消毒剤(次亜塩素酸水)が流水状態で決められた時間出てくるように設計された「電解水供給装置」などを用いれば、より確実な手指の消毒ができます。

矢野先生

Q9:インフルエンザも流行をはじめていますね。

ノロウイルスの後に流行するインフルエンザウイルスですが、近年の状況と、今年の特徴などについて教えていただけますか?

服部益治委員長

A9:

インフルエンザの流行は、例年の傾向からみますと、ノロウイルスの活動が収まってくる年始ごろから始まります。したがって、今期の流行は、始まったばかりですので、その規模や特徴はまだわからず、現在のところ昨年の同時期と同程度になっています。ウイルスの種類も、2009年に流行したH1 2009やH3及びB型が混在しています。

ワクチンにつきましては、従来のワクチン製造に加えて、培養細胞を使用したワクチン開発が進められている状況です。

矢野先生

ノロウイルスは、お腹の症状(おう吐・下痢、腹痛)が中心で、一方インフルエンザは発熱、鼻水、関節痛の全身症状が中心ですが、2009年流行のブタインフルエンザのようにお腹の症状(下痢、腹痛)を伴う型もあります。

医師としては、これからの季節、お腹の風邪には、ノロ、ロタ以外にインフルエンザもあることを知って頂ければと思います。おう吐・下痢、発熱の発汗などで失われる体液を補うことを忘れないで下さい。

矢野先生、本日はお忙しい中を有り難うございました。
感染症の専門家から、ノロウイルスの最新事情やその対策をご紹介いただき、教えて!「かくれ脱水」委員会の活動にとって貴重な時間となりました。
さまざまな機会に、ご紹介いただいた情報を広く伝えていきたいと思います。

服部益治委員長

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