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かくれ脱水コラム

コラム
更新日:2016/4/1
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ランナー必読!ランニングを安心して楽しむためのQ&A

最近、秋の本格的なマラソンシーズンと比して、市民マラソンランナーにとってのシーズンスタートは4月19日の長野マラソンから始まるといわれています。かくれ脱水ジャーナルでは、これを機にあらためてレース前に出来る予防、レース中の対策、そしてレース後のカラダのケア、そしてマラソンにつきものの脱水対策マネジメントについて確認し,活用して欲しいと考えました。ご指導いただいたのは、ご自身がランナーでもある日医ジョガーズの中村 集先生。ランニングに伴うリスクを回避し、レースを楽しく完走するために、すべてのランニング愛好家の方々にぜひ読んでいただきたい特集です。

医学博士 中村 集

集クリニック院長。1980年、東邦大学医学部卒業後、同大橋病院第3外科、同佐倉病院勤務後、一宮温泉病院(山梨県)にて外科診療、訪問診療などの地域医療、回復期リハビリテーション医療に従事。2008年より杉並区で集クリニック開設。日本体育協会公認スポーツドクター。日本消化器病学会専門医、日本抗加齢医学会専門医。各地のマラソン大会で医療活動を援助するNPO法人日本医師ジョガーズ連盟(JMJA)会員。

ランニングを安心して楽しむためのQ&A。

ランニングを安心して楽しむためのQ&A。

Q1:まず、ランニング時の脱水症リスクについてお教えください。
A1:ランニングには
脱水リスクはつきものです。

ランニング時には体温が上昇しますが、カラダは汗をかくことで気化熱をうばい、上がった体温を元に戻そうと調整します。しかし、汗をかくと体液が失われていきます。失われた水分・電解質を適切に補給せずにいると脱水状態に陥ってしまいます。脱水状態は臓器の機能に影響を及ぼすため、筋肉のけいれん、疲労や倦怠感、頭痛、めまい、吐き気と体調の変化があらわれ脱水症となるわけです。

ランニングを安心して楽しむためのQ&A。

Q2:中村先生は、ご自身ランナーでもいらっしゃいます。体験もふまえて、レース参加前の脱水予防は、どうすべきだとお考えでしょうか。
A2:給水プランの立案とランニングの際の
ウェア選びが大切です。

第一は、マラソンレースでの発汗量を予測し、レース中の給水プランを立てることです。レースに出るような人は、事前に、マラソンのレーススピードで1時間走を行い、前後の体重を測ること。その体重差すなわち体重減少量が、その人の発汗量(1時間あたり)の目安になります。

第二に、レース開始前に水分を補給すること。1~2時間前に250~500mlの水をこまめに補給するようにしてください。スタート前にあまり多く飲んでしまうと、水分が胃にたまり走りづらくなるし、糖分濃度が濃くても胃にたまりやすい。ランナーには、失われた体液を補充するために、水分や塩分やカリウムなどの電解質をバランスよく含んでカラダへの吸収がよく、また保持されやすいためにランニングにも支障をきたさない、冷やした経口補水液がおすすめですね。私はレース開始の1~2時間前に250~500mlの冷たい経口補水液を何回かに分けて飲んでいます。

また、天気予報で、レース時の天候を事前にチェックし、給水のプランの調整や、暑くなることが予想されれば、放熱仕様の素材によるウェアを着用するなど服装の検討をすることも重要です。晴れの時は、紫外線対策で帽子やサングラスの用意も必要。また、悪天候の時には使い捨てができる程度の雨具があれば、急なスピードダウンの時に体の冷えを防げます。レース中にこまめな水分補給だけではなく、カラダに水をかけたりスポンジを上手く使ってカラダを外からも冷やすことも大切ですね。

ランニングを安心して楽しむためのQ&A。

Q3:レースに参加する際の心得や、レース中の心得には、どのようなものがありますか?
A3:電解質を含んだ水分を摂り、
異変を感じたらレースを止める
意識を持つ。

走っているときの給水は、1時間あたり400~800mlが目安です。体型やランナーの走りの質などの個人差や環境的な条件によって若干異なりますが、適量を選択(5kmごと給水で)して水分を摂ってください。

気温が高い日ならとくに汗をかきます。脱水対策としては、水分だけではなく電解質の補給(特にナトリウム)と糖分が必要です。給水では、一般のスポーツドリンクよりも塩分を約2倍、糖分を約半分に調整した吸収の早い経口補水液(OS-1など)が有用でしょう。

ランニングレースの時、脱水のケア(補水)には何を飲むか?

電解質を含まない水の飲みすぎによる弊害もあります。水の飲み過ぎで血中ナトリウム濃度が低下して起こるのがいわゆる「水中毒」。不安感、めまい、頭痛などになる「虚脱」という症状を起こしますが、症状が脱水症状に似ているので、まだ水が足りないという勘違いを招きやすく、水をあらたに飲んで症状を悪化させることがあります。さらに重篤になると肺水腫、脳浮腫から死に至ることもあり、注意が必要です。

体調に変化を感じたら中止することもいとわないという意識をもっていてほしい。意識がある程度しっかりしていれば「今日はちょっと体調がおかしいな」という自覚があってもレースを中断しないで頑張って走ることがあります。でも、意識がもうろうとしてきたら判断力が低下してしまう。めまい、筋肉痛、けいれん、しびれ、顔面蒼白、呼吸が荒くなったら走るのをやめて、涼しいところで休み、水分や塩分を補給しましょう。症状がひどくなればレースを中止してドクターを探したり、病院へ行くべきです。

ランニングを安心して楽しむためのQ&A。

Q4:疲労困憊でゴールした直後は、水分補給に注意点がありますか?
A4:ゴール後は、体重減少の
70〜80%の水分補給を。

ゴール後には、すぐに発汗による体重減少を測り、その減少量の70~80%の水分補給を行いましょう。

ランニング後のビールを楽しみにしているランナーも多いでしょうが、直後のビールはNGです。アルコールは利尿作用が多く水分排泄が促進されます。ランニング直後は体が水分を欲しているにもかかわらず、水分を喪失します。なるべく電解質などを含んだ吸収の良い水分を補給してからにしましょう。

■ゴール時の水分ケア

ランニングを安心して楽しむためのQ&A。

Q5:日頃の食生活でも、ランナーの脱水対策につながることがありますか?
A5:食事からの
水分補給を心がけましょう。

日頃から一日に補給する水分の半分は、食事から摂ることを心がけることです。スープ、味噌汁は水分とともに適度な塩分も摂れます。野菜、果物などにはミネラルも多く含まれており、旬で新鮮なものを選んで食べたいですね。

また、夏は特に冷たい食べ物を選びがちです。ざるそば、ひやむぎ、そうめん、アイスクリームなど糖質の多い食事のとり過ぎは、タンパク質、ビタミン、ミネラル、食物繊維などが不足するバランスの悪い食事となりやすく、胃腸の冷えは消化吸収が悪くなり夏バテの原因になります。ランナーは、肉、魚、卵、大豆などのタンパク質をしっかり摂取し、しょうがやにんにくなど、体を温める食材を含んだ食事を一日一回は摂るよう心がけることをおすすめします。

ランニングを安心して楽しむためのQ&A。

Q6:中村先生は、日医ジョガーズ*を通じて、レース中の救護医となるランニングドクターとしてさまざまなレースにも参加されています。救護医として、ランニングをする方々へお伝えしたいことはありますか?
A6:経口補水液はマラソンなどの大量の汗をかくシーンには有用です。

日医ジョガーズのランニングドクターとして救護医としての参加時には必ず経口補水液を携行し、脱水状態に陥ってしまったランナーに対処しています。今までは脱水で倒れているランナーがいたら、救急車で病院か救護所へ運び点滴をすることが多かったのですが、飲むことができるようであれば(意識障害がなく軽度から中等度までの脱水状態の場合)、経口補水液で回復することが多くなり不要な救急搬送が減りました。意識がもうろうとしている方もいらっしゃるので誤嚥(ごえん)を防ぐためにもゼリータイプを携行するのが良いかと思います。

マラソンイベントで活動中の中村先生

米国心臓医学会の発表にもありますが、マラソンなどの大会の現場には、ランナーの体調管理や緊急時の救護体制などの指針が明確ではありません。日本も同様です。日医ジョガーズとして、近年、ランナーと一緒に走っていち早く救護活動をする認定ランニングドクターなどを育成し、なるべく多くのレースで脱水や心肺停止などのリスクへの対応を進めていますが、まだ十分ではありません。

ランナーとしてレースに出場する場合は、そのレースに応じた練習を行い、水分補給やウェアの選考なども含めてレースプランをたて、レース前の補水や場合によっては経口補水液を携行するなど対策を怠らないこと。そうした予防や対策が、安心してランニングを楽しむことにつながると思います。

また、中高齢者では、負荷をかけることにより自分では気がつかない心臓病が悪化して心肺停止になるリスクもありますので、レース前に一度専門医のチェックを受けることは絶対に必要だと覚えていてください。

*日医ジョガーズの活動とは

日医ジョガーズ

生涯スポーツを実践し啓発する、動ける医師たちの団体

正式には、日本医師ジョガーズ連盟 JMJA (Japan Medical Joggers Association)全国組織としては1983年(昭和58年)に結成。人々に健康のため生涯スポーツが必要で有ることを伝えるために医師自らが運動を実践。「遅いあなたが主役です」なる言葉を掲げ、競争として速く走るよりもマイペースで遅く走ることを勧めている。

活動としては、JMJAとして1年に1回全国大会を各地で主催し、ジョギング大会や親睦会、講演会を開催。各種イベントを開催することで生涯スポーツの必要性を説き、 日常的持久運動習慣の意識拡大を図るとともに、医師の団体であることから、各地で開催されているマラソン大会の医療活動を援助して、大会運営に貢献。ランニングドクターの育成にもチカラを入れている。
1999年、平成11年7月にはNPO法人に認定され、 活動の場はさらに広がり、海外のランニング組織との交流もおこなっている。

日本医師ジョガーズ連盟 http://www.jmja.or.jp/

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