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かくれ脱水コラム

コラム
更新日:2016/4/1
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高齢者がノロウイルスに慌てないために

ノロウイルスからの感染性胃腸炎の発生報告が多くなってくると、例年、高齢者の救急搬送のニュースがあります。2015年は新型「GⅡ.17」の流行が予想され、一層の注意が必要でしょう。ノロウイルスは、感染し発症すると急激なおう吐や下痢が続きますが、小児のノロウイルス対処法でも紹介したように、脱水状態を進行させなければ自然治癒するものです。高齢者のノロウイルス感染リスクを減らし、この冬を安心して過ごしていただくために、高齢者にとってノロウイルスのリスクは何なのか、家庭で出来る予防や対処方法について、かくれ脱水委員会の髙瀬委員に聞きました。必読のインタビューです。

髙瀬義昌

医療法人社団 至髙会
たかせクリニック理事長 医学博士
髙瀬義昌(たかせ・よしまさ)

包括的医療・日本風の家庭医学・家族療法を模索し、民間病院小児科部長、民間病院院長などを経て、2004年東京都大田区に在宅を中心とした医院を開業。認知症などの画像解析、社会ソリューションを学ぶため東京医科大学茨城医療センターで週1回外来診療をおこなっている。特定公益増進法人 日米医学医療交流財団 常務理事、学校法人国際医療福祉大学 メディカルスーパーバイザー、医療法人社団プラタナス 用賀アーバンクリニック・松原アーバンクリニック 顧問、ITヘルスケア学会 常任理事、杉浦地域医療振興財団 理事など。著書に、『医療を変えるのは誰か?—複雑系で解く21世紀の医療』(はる書房刊)、『ぜんそくなんかふきとばせ!』『おねしょまじんをやっつけろ!』(佼成出版社刊)、『ブレイブのぜんそくってなんだろう』(つくば総合研究所刊)ほか。

ノロウイルス対処法 基礎知識

ノロウイルスからの感染性胃腸炎で
覚えておくべきポイント

  • ◎ノロウイルスの感染情報があったら、生ものを控える
  • ◎予防は石けんでの手洗い、うがいが原則
  • ◎感染性胃腸炎は通常2週間以内に自然治癒する
  • ◎おう吐はせいぜい1〜3日(通常は1日程度)
  • ◎下痢はせいぜい1週間(通常は1〜3日)
  • ◎上記期間、脱水にならないようにするのが、治療の原則
  • ◎めまいなどがしたら経口補水液を活用する

ノロウイルスからの感染性胃腸炎での
脱水対策のポイント

  • ◎おう吐のピークはせいぜい半日〜1日、その間での脱水対策
  • ◎下痢は無理に止める必要はない。その間の脱水対策
  • ◎経口補水療法が対処の基本(無い場合は、水分と塩分を摂る ※参照①)
  • ◎嚥下機能が弱まっている高齢者にはゼリータイプも試そう
  • ◎最初は1〜5分ごとに(おう吐が止まれば適量を)

これで納得、安心。ノロウイルス対処法

Q1:ノロウイルスによる感染で重篤化する例をみると、高齢者の患者が多いようです。これは何故でしょうか?
A1:下痢やおう吐による脱水症が、深刻な事態を招きます

原因のひとつは、高齢者が脱水に弱いということ。カラダに占める水分量(体液量)は成人で体重の60%程度ですが、高齢者は加齢とともに水分の貯蔵庫である筋肉量の減少などがあり、体液量は50%程度まで減少しています。もともとカラダの水分が少ない上に、普段の食事量も減少している傾向がありますから水分や塩分の補給も滞りがちです。

ノロウイルスによる感染症の症状は、主におう吐や下痢です。おう吐や下痢では多くの水分とともに塩分などの電解質も失われますから、高齢者は脱水症になりやすいわけです。脱水によって、もともと持病のある方などはその症状が悪化することもあります。また、高齢者は嚥下機能も低下している方も多く、ただでさえ減少している食事や飲水を控える傾向にあります。脱水が嚥下機能の低下を進め、嚥下機能の低下がより脱水になりやすい状態をつくるという負のスパイラルを起こし、重篤化を招くことも多いようです。

Q2:ノロウイルスに対する高齢者ができる予防法などはありますか?
A2:流行りの時期は生ものを摂らない。そして手洗い・うがいの徹底

加齢とともにウイルスなどの外敵からカラダを守る、人間に本来備わっている免疫力も減少しています。ですから、ノロウイルスの流行る11月末から1月末には、発生源と言われるような食べ物を控えるほうがいいでしょう。

生の魚介類や半生の肉類、生卵などを控え、食べるなら十分な加熱をすること。この季節、付近の施設などで発症情報がある場合、介護士の方々は以前から感染源と言われている牡蠣などの2枚貝を食べないようにしているという話もありますよ。

後は徹底した手洗いと、うがい。手洗いは、手のひらだけでなく、手の甲、指の間、ツメのなか、そして手首まで石けんを使って洗うこと。さまざまな地域の行政が配布するパンフレットなどを参考にするといいでしょう。

Q3:高齢者のいる家庭での予防・対策について教えてください
A3:汚物に絶対に触らない。その処理の方法を覚えておくこと

施設などでは便の処理は徹底していると思いますが、家庭でも、トイレを汚した場合やおう吐した床などは慌てないで絶対に触らないこと。落ち着いて、防備して処理しましょう。

その場所を消毒することも必要です。消毒には塩素系漂白剤(次亜塩素酸ナトリウム)を100分の1程度に薄めて使うのがいいでしょう。ウイルスを含んだ吐しゃ物は、目に見えるところだけでなく広い範囲に飛散していますから、半径2メートル程度の範囲も消毒すべきです。

家庭で消毒する際は、必ず換気し、マスク、手袋のほか、足や手元をビニールなどで覆ってウイルスの付着を防ぐこと。ノロウイルスなどの感染症対策に吐物処理キットが売られていますのでそれを利用するのもいいと思います。掃除と消毒が終わったら、ビニール袋などに捨てしかるべく処理して下さい。カーペットなどにはスチームアイロンなどによる加熱も有効ですが、1カ所あたり2分程度の加熱が必要なので、ご家庭での広い範囲の処理には不向きです。

「ノロウイルス対策セット」イカリ消毒(株)
一般的な吐物処理キットの内容。現在さまざまなメーカーがこうした基本セットで販売している。(撮影協力:機能水研究振興財団)

Q4:ノロウイルスに対して、高齢者や周囲の人が覚えておくべき対処法を教えてください
A4:下痢やおう吐からの脱水のために、経口補水療法が生まれたんです

私たちが在宅診療をおこなう場合、感染性の胃腸炎への対処として、めまいがする程度の軽度から中程度の脱水状態なら経口補水療法をおこないます。高齢者は、おう吐や下痢が始まった時点ですでに脱水状態。速やかに水分と電解質、それに適度な糖分(電解質の吸収に役立つ)を摂ることが必須なのです。

よくスポーツドリンクや、水ですまそうとする人がいますが、水では体液を薄めてしまい、利尿をうながして脱水を進めてしまいますし、スポーツドリンクなどでは、吸収を考えると下痢やおう吐時にはお勧めしません。

経口補水液を摂ること。経口補水液はもともと下痢やおう吐への対処法として、どこでも誰もが点滴のような水分と電解質の補給効果を期待できるよう開発されたもの。失った体液の成分と似ているだけでなく、適度に含まれているブドウ糖が、水や電解質を吸収する部位である小腸の機能にスイッチを入れる働きをしてくれるのです。

脱水があるかないかで免疫力がまるで違います。ケースバイケースですが高齢者の場合は、持病が悪化したりする引き金にもなります。ノロウイルスは長くても数日で症状は落ちつきますが、落ち着いても2〜3日はウイルスが体内に残っていますから、持病がある人はもちろん、体力が落ちている高齢者は、しばらくの間は注意した方がいいでしょうね。

Q5:経口補水液を飲みたがらない高齢者も多いです。周囲はそれで困ることもありますね
A5:拒否されても慌てない、焦らない。落ち着かせてから摂ってもらう

とくに認知症のある患者さんの特徴として、最初「拒否」から入っていくことが多い。それが初期症状のひとつです。でも、落ち着いて、やんわり勧めてください。めまいや、吐き気が続いているときは脱水が進んでいますが、経験からいうと、こういうとき、経口補水液は美味しく感じるんです。

たとえば、汗をかいたときに脱水対策で経口補水液を勧めた時に拒否をしていた人や、食事量が低下しているために水分や電解質補給をうながすために勧めても飲まなかった方も、一度経口補水液を口にすると、なんとか飲んでくれます。嚥下機能が弱っている人にはスプーンなどでゼリータイプを含ませると飲みやすいようですね。

大切なのは、周囲が慌てない、焦らないこと。体調を崩し不安になっている高齢者も経口補水液を飲むと少し落ち着きますし、そうなると拒否する行為も改善するようです。私は、普段から、風邪をひいたときや、夏場に外を歩いたときなどに、家族が経口補水液を飲むようにいざなうなど、いざという時のために飲み慣れておくことを私はお勧めしています。

経口補水液の飲み方、与える量などは、かくれ脱水ジャーナルに詳しいですから、参考にされるといいでしょう。

ぜひご確認ください。
「経口補水液を上手に使って脱水対策を!」
http://www.kakuredassui.jp/care4
「小児のおう吐や下痢。冬脱水対策は、素早く補水」
http://www.kakuredassui.jp/virus4

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