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かくれ脱水コラム

コラム
更新日:2016/10/3
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前もっての準備!サイクルスポーツの脱水対策

サイクルスポーツを楽しむすべての人へ前もっての準備!サイクルスポーツの脱水対策

近年、ブームが続くサイクルスポーツ。とくに長距離を走るロードレースは、脱水との戦いともいえます。サイクルスポーツの脱水症・熱中症リスクとその予防や対処について、富和清訓ドクターと、チーム・シエルヴォ奈良の山下貴宏選手がトーク。レースに役立つ情報満載の対談は、自転車ファン必読です!

サイクルスポーツを楽しむすべての人へ

自転車がブームです。ロードレースへの参加を目指す人々も多くなってきました。しかし、ロードレースは、運動量、走行距離、レース環境など、非常に過酷なスポーツ。適切な脱水対策を怠ると、脱水症そして熱中症への危険を持つといわれています。

かくれ脱水JOURNALでは、暑い季節の前に、ご自身が本格的なロードレーサーであり、レースドクターとしても活躍する富和清訓先生と、日本のトップ選手の1人、山下貴宏選手による、ロードレースにおける脱水リスクと、その適切な予防と対処についてのトークを緊急企画。ロードレースを目指す方だけでなく、サイクルスポーツを愛する方々すべてに、今、読んでいただきたい対談となりました。

シエルヴォ奈良とは・・・・
シエルヴォ奈良 2010年設立の、奈良をベースとして活動する自転車ロードレースチーム。CIERVOとは「牡鹿」の意。国内レースに積極的に参戦し、14年度はランキング10位で終了。山下貴宏選手は、チーム・シエルヴォ奈良キャプテン。2011年ツールド北海道・第2ステージ優勝ほか、国内だけでなく、国外のレースにも参加している。奈良を中心に、自転車を通じた社会奉仕活動も積極的におこなっている。

脱水症は熱中症を招く

脱水症とは、「体液が過度に失われたことによる状態・症状」です。熱中症とは「暑い環境で、身体がそれに適応できなくなって生じる状態・症状」です。これらは密接な関係にあります。夏に起こる脱水症の多くは、暑い環境で発生し、その結果、暑い環境に身体が適応できなくなり、熱中症に至ると考えられます。具体的な流れとして、暑い環境では体温の上昇がみられますが、過度な体温の上昇を抑えるために汗を出します。発汗が活発になり、そのまま体液が不足してしまうと脱水症になります。脱水症になると汗が作れなくなるので、放熱ができなくなり、熱を体内に溜め込んでしまいます。その結果、熱中症になります。ここでいう 体液というのは水分と電解質をいいます。電解質というのは、身体のバランスを保つのにとても重要な、ナトリウム、カリウム、カルシウムなどが水に溶けてイオンという電気を帯びた状態の物質です。食塩水はその代表格ですね。覚えておきましょう。

脱水症は熱中症を招く

ロードレースは究極のスポーツ。脱水リスクはつきものです

ロードレースは脱水リスクだらけ
  • ■スピード疾走は集中が続く
  • ■屋外での長距離レース
  • ■集団での走りやスピードなど、意識障害時の危険
  • ■ステージレ—スなどの体調管理の難しさ

まず、ロードレースの脱水症リスクについてお教えください。

富和清訓先生

富和 サイクルロードレースは登り坂やスプリント時は身体・心肺機能を極限まで使い果たします。野外のスポーツですし、脱水症や熱中症のリスクは非常に高いと思います。米国心臓医学会(ACC)、によると、長距離ランナーにとって熱中症は心疾患よりも死亡リスクが約10倍高く、熱中症や脱水症のリスクへの理解も充分ではないという報告 1)もあり、自転車競技、特にロードレースでも同様の危険性が考えられます。特にロードレースは集団で走っていることが多いので、ちょっとした不注意により大きな落車事故を起こすこともあります。

また、選手が熱中症などで意識障害を起こした場合でも自転車は高速で走っています。転倒の際に、衝撃を軽減するための受け身の姿勢がとれなくなり、致命的なケガをするリスクもあります。脱水症になると、強い口渇感や筋肉痛、筋肉の硬直(こむら返り)、頭痛、おう吐などが症状として現れます。もちろん、熱中症による意識障害を来した場合には、こうした症状に気付かないこともあるでしょう。

1) Yankelson, L et al., Life-Threatening Events During Endurance Sports – Is Heat Stroke More Prevalent Than Arrhythmic Death?, JOURNAL OF THE AMERICAN COLLEGE OF CARDIOLOGY, VOL.64, No.5, 2014

山下選手は、脱水症や熱中症の経験がありますか?

山下選手

山下 レース中での脱水症状は陥りやすく、何度も経験しています。熱中症は過去に一度だけ経験したことがあり、それはレース前の出来事でした。日頃の疲れが溜まっていたのに加えて、前日も寝不足でした。レース前という緊張感もあったので、筋肉痛などの疲労感はなかったのですが、スタート直前に突然、生あくび、大量の汗、頭痛、おう吐の症状が出て病院に・・・。熱中症と診断され処置してもらいました。とにかく一刻も早く診てもらうことが大切だと感じました。

どのような対策をとるべきですか?

富和清訓先生

富和 特にレース中は発汗により不足したものを速やかに補給しないといけません。汗は塩辛い(しょっぱい)ですね。ということは水分と一緒に塩分=電解質を消費していると考えないといけません。だから、電解質を含んだ飲料を補給する必要があるのです。

水分補給に関しては、レース後に脱水率(%)が3%を超えると体温(直腸温) が39度を超えているという報告があり、昨今では脱水率を2%未満にすることが指標になっています。ただし、その日の体調や環境から発汗量は大きく左右されるので明確な量を決めるのもまた難しいですね。

日頃のトレーニングの前後で体重測定を行う習慣をつけ、発汗量(体重減少量)の目安をつけておくのもよい方法だと思います。厳密にどれだけの量をというよりも、渇きに応じて、渇きかけに摂取するというのが理想的です。一気に飲むと、急に電解質が体内に入って、電解質のバランスを崩す原因にもなります。飲み過ぎも怖いのですよ。一気に飲むのではなく、回数を多くして、身体が脱水になるのを予防すべきです。

逆に、電解質をあまり含まない水分補給が続くと、結果的に水分の補給過多になり、体液が極度に薄くなります。こうなると体内の電解質が薄まるのを阻止する動きが働いて、補給した水分が吸収されずに尿にたくさん出ていくという悪循環に陥ります。これは、特にレース後に水分摂取してから遅れて発生することが多いので、注意しないといけません。また過度に水分のみの補給を続けていると、極度の電解質濃度の低下(低ナトリウム血症)で死亡することもあり、レース後の補給も水分と電解質を適切に補給し、腹8分目という考え方が望ましいと思います。

山下選手のチームでは、そうしたリスクに対してどのような対策を立てられていますか?

山下 チーム内では脱水症状および熱中症については最近やっと認知するようになってきました。対策としては、トレーニング中から十分に水分を摂取するよう心がけています。特に暑い日には運動前から十分な水分補給に努めます。また、ミネラルの摂取も忘れてはいけません。レース前には前もってミネラルが含まれるサプリメントを服用する選手もいます。

オーバーヒートする前にしっかり対策しておくということが大事だと指導されています。頭や体に水をかけたりします。特にレース中は速いスピードで走るので、風を受けて体温の上昇を防いでいますが、夏場のヒルクライムレースなどでは、スピードが遅くなって風を受けられないためオーバーヒートしてしまいます。そんな時には、カラダに水をかけ気化熱の効果で体温の上昇を押さえることが有効です。私は夏場、レーススタート前によく行いますね。ウォーミングアップの時点で、すでに体温が上がっていますから。レースのみならずトレーニング中にも必要と感じれば自転車には給水用のボトルが取り付けられるようになっていますので、その水をかけます。

山下選手
左:レース直前に経口補水液をボトルに詰めるシエルヴォ奈良の選手 右:レース中に水をかけてカラダを冷やす山下選手

富和 レース中に体温を下げるには汗をかくことが中心になると思います。そのためにも水分補給を続けることが必要なのです。それでも足りないときには、水をかけて気化熱の効果を高めて体温を下げるという方法があります。レース中に止まって身体を休めるわけにはいきませんからね。

ロードレース流、ウェアと経口補水液の活用法

ロードレースにおける脱水対策
(レース前)
  • ■朝食を摂る
  • ■日頃からの3食習慣
  • ■前夜の禁酒
  • ■軽いウォームアップとして風を受けて走る
  • ■ウォームアップ後の日陰での休息
(レース中)
  • ■速乾性の機能性ウェアによる汗の気化促進
  • ■ステージレースなどでの経口補水液の活用
  • ■レース中は水分をかけてカラダを冷やす
(レース後)
  • ■経口補水液を腹8分目

レース参加前からできる脱水予防や対策は、ありますか?

富和 前日の飲酒に注意しましょう。レース会場は、友人との久々の再会の場でもあります。その気分にうかれて、ついつい危険な飲酒に繋がってしまうことがあるのです。お酒を飲むと、臓器への負担に加え、利尿作用がありますから脱水状態で翌日のレースに向かうことになります。

トレーニング時も同じ。ホビーレーサーだと朝練を行うこともありますが、飲酒すると睡眠中に軽い脱水傾向になることがあります。予防としては、練習予定の前は飲酒を適量に控え、日頃から朝食をしっかり摂ってください。食事に含まれる水分はとても大切です。一般的に、一日に必要な4割が食事からの水分摂取といわれています。食事は3食きっちり摂ることが、脱水症の予防の観点からも重要です。

山下
速乾性に優れたサイクルウェア

また、ウェアも大切です。汗が蒸発する際に気化熱として熱を奪ってくれることで体温を調節しています。湿気が多く、皮膚がジトッとしている状況が続くと、汗の蒸発が妨げられます。その結果、体温調節が難しくなり熱中症の原因にもなります。吸収・拡散・蒸発を備えた速乾素材のウェアがお勧めです。ただし、ヒルクライムの場合は、山の頂上あたりはかなり冷えます。冷え過ぎにも注意ですね。

山下 私たちもレース前の飲酒は絶対しません!長時間のスポーツでは肝機能を低下させることはよくありませんし、富和先生のおっしゃったように、普段の食事を3食しっかりとることが大切だと思います。注意しているのは、レース前には、ウォームアップのときにオーバーヒートしないこと。体温が上がり過ぎないように、路上に出てウォーミングアップをすれば、風を受けて体温の上昇を防ぐことが出来ると思います。日陰に入るなど休息場所にも配慮し、ウォーミングアップ後も十分に水分補給すること。全ては「前もっての準備」です!

レース中、何を摂るべきでしょうか?

富和 一昔前は、医学的治療を必要としない軽い脱水傾向であったとしても、点滴を施していた時代もあり、救護所で行われていたということも聞いたことがあります。しかし、昨今はアンチドーピングの観点から、医学的治療を要すると判断されない場合、または緊急時を除いての点滴はドーピング違反になります。したがって、脱水の補正には経口補水液を摂取するほかはないですね。現在、日本で一般市販されている飲料水では、OS-1よりも効果的に電解質を補給できる飲料はないと思います。経口補水液は、20世紀最大の医学上の進歩とも言われているくらいですから。

糖分が多く、実際に必要な電解質が少なめなので、脱水症や熱中症に近い状態であると、スポーツドリンクはお勧めできません。体内への吸収が遅いものが多いからです。予防目的ならばそれでよいと思いますが…。

山下
シエルヴォ奈良のクーラーボックスには
経口補水液が常備されている

山下 私たちのチームは、水と経口補水液のOS-1を摂取しています。以前は、市販のスポーツドリンクを摂取していました。200kmを走る距離レースの場合などは、多い時で3~4リットルほど水分補給しますが、スポーツドリンクは吸収しきれず、胃に負担があって、次の日に辛くなることがほとんどでした。

しかしOS-1は非常に吸収速度が速い組成なので、胃が荒れることや下すことはなくなりました。脚がつったりしなくなって、本当に吸収されているんだな、と実感しています。ちょっと驚きでしたね!今や必要不可欠なものになっています。

レース中は、どうしても集中しており、ついつい給水することを忘れがちです。長時間のレースの場合、トイレもガマンすることのほうが多いので、他の飲料に比べて水分を体内に保持しやすい経口補水液は良いと思います。自分の体験からですが、ほとんどの方がスピードメーターをつけていらっしゃると思いますので走行時間を確認して、1時間に500mlのものを1本摂ることを目安にするといいと思います。覚えやすいですし、十分に摂取しているかどうかわかりやすいからです。

レース中に3〜4L経口補水液を飲むのは適量でしょうか?

富和 一般に汗をかいていない人が1時間に1本摂ると、過度に電解質を摂取してしまうので好ましくありません。レース中の選手は大量の発汗で電解質を消費していますので、そのような選手に限っていえば、問題ないと思います。ツール・ド・おきなわのような200kmを走る長距離レースでは、5〜6本飲むこともあるでしょう。飲まなければ、脱水症となって良い順位でゴールできないと思います。

レースでは、必要な水分と電解質が取れないとパフォーマンスがダウンし、負けてしまいます。そういう意味では、水分と電解質の補給は、勝利につながる大事な要素の一つです。また、数日間続くステージレースなどの場合、途中でお腹を下してしまうと翌日からのレースが続行できなくなり負けてしまいます。選手の体調を保つには、電解質及び糖分が含まれ、かつ人間の浸透圧より少し低めの飲み物で腸への吸収を促すことが大事だと思います。その*機能を備えているのが、経口補水液です。

山下選手
レース中に経口補水液を飲む山下選手

山下 ステージレースは回復が大事です。1日目に脱水症状が起きてしまったら、次の日は本来のパフォーマンスができません。レースは消耗戦なので、いかに早く体力を回復させるかが大事なのです。また、内臓が弱ると、筋肉を回復させることができないので、どんどん疲労がたまってしまいます。吸収の良い経口補水液があれば、内臓を弱らせないので助かります。次のレースまでに回復することで、良いコンディションでレースに出られるわけです。トレーニング中でも同じです。その日のうちに体力が回復しないと、次の日は激しいトレーニングに耐えられない、つまり強くなれないということなのです。

レース前に経口補水液を飲むことは、脱水を防ぐことになりますか?

山下
レース前に経口補水液を飲む山下選手

富和 レース中は大量の発汗によって、ナトリウムやカリウムなどの電解質を消失するので、ウォーミングアップを終えてスタート地点に立った時点で適量の経口補水液を飲んでおくのも有効だと考えています。

スポーツは、いつも脱水に注意!

現在、ロードレースのレースドクターはどのような状態ですか?

富和 本場ヨーロッパのロードレースは、町から町に平均180km移動することが多いですが、日本では交通事情により、1周約10~20km周回コースや、市街地で、1周数キロのコースを周回するクリテリウムというレースが一般的です。

レースドクターは、クリテリウムの場合、救護所に待機することが多いですが、ロードレースの場合には、ドクターカーに乗車し、ずーっと選手を追いかけることになります。落車による骨折、熱中症や命に関わる重大な事故に素早く対応するためです。レース中、万一に備えてAED(自動体外式除細動器)を常に使える状態にしています。また、メディカルボックスには常に経口補水液OS-1が入っています。

富和清訓
ドクターカーと富和先生

山下 富和先生のようなロードレースを知るレースドクターがいらっしゃるのはありがたいです。サイクルスポーツは危険なスポーツです。脱水症および熱中症は命に関わるので、正しい知識と対処が必要です。もしそのような状況に陥った場合、OS-1なら素早い水分・ミネラル補給ができます。ウェアのポケットにゼリータイプをいれておくこともできる。どこの薬局にもありますし心強いですよね。OS-1を使用していると、必要な水分や電解質の素早い補給だけでなく、運動後のカラダへの負担を感じません。この効果は強く実感しているだけに、他のチームには内緒にしておきたいのですけどね…!

富和清訓
ドクターカーに乗車して選手のすぐ後ろを追いかける

富和 これからの時期では、レースでスタートラインに立つ時点で脱水症・熱中症予備軍になっていると考えて良いと思います。まず対策として、ロードレーサーはボトルを携行できるので、いつでも補給できるようにしておくのが大切です。「スポーツは いつも脱水に注意!」と認識し、暑い季節には練習中にもOS-1を携帯すると良いと思います。ただし、摂取量は度が過ぎてはいけません。やはり腹8分目です。

より多くの選手が、過度の脱水や熱中症の予防や対処方法を知ることで、より高いパフォーマンスで競技が出来ると思います。結果として日本から能力の高い選手、世界に通用する選手が活躍することに繋がると思います。2020年には東京オリンピックが開催されますし、これから自転車競技がより活発になることを期待しております。

富和清訓

南奈良総合医療センター 整形外科
富和清訓(とみわ・きよのり)

大学時代にロード&トラックレースを始め、JICF(日本学生自転車競技連盟)に所属しレースに参戦。ツール・ド・北海道2006(市民レース)で優勝。現在はUCIレースなどのレースドクターとして活躍。

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