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「かくれ脱水」の発見法

かくれ脱水
更新日:2016/4/1
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ドライバー必見!渋滞時のクルマの中は脱水環境

ドライバー必見!渋滞時のクルマの中は脱水環境

カラダを動かさない狭い空間。エアコンに頼った温度調節。集中をよぎなくされるドライバーの心理やカラダの状態。まだ穏やかな気候ではあっても、家族旅行や帰省などで道路が混み合い渋滞になりやすいゴールデンウィークの車中は、危険な脱水環境になっていきます。楽しく快適な家族旅行や移動のために、GW直前のこの時期に、車内での脱水予防と対策についてぜひ確認して下さい。 教えて!「かくれ脱水」委員会の服部委員長の解説です。

服部益治

兵庫医科大学小児科学教授 医学博士
服部益治(はっとり・ますじ)

日本小児科学会 (専門医)、日本小児保健協会(理事)、日本腎臓学会 (指導医・専門医)、兵庫県小児科医会 (理事)、日本夜尿症学会(常任理事)、日本小児科連絡協議会「自動車乗車中の子どもの安全推進合同委員会」(委員長)など。著書に、『腎・泌尿器疾患診療マニュアル(共著)』(日本医師会)、『腎臓病の食事指導ハンドブック(共著)』(南江堂)、『保健医療ソーシャルワーク実践(共著)』(中央法規出版)、『子どもの臨床検査-脱水(共著)』(診断と治療社)など

飛行機の中と同じ。渋滞時の車内環境

「渋滞時の車内は、エコノミークラス症候群を誘発する飛行機の中の環境と似ています」と服部委員長。エコノミークラス症候群は、飛行機に搭乗しているときに、機内の乾燥によって体内の水分が失われ、血液がドロドロになって血栓が出来やすい状態になることと、長時間の一定姿勢とが相まって、脚の裏側に静脈血栓が出来ることから、その状態での歩行によって血栓が肺の血管につまり呼吸困難などを引き起こすもの。これと同じような状況は、乾燥した室内での同一姿勢を維持しておこなう長時間作業においても起こることが知られています。

先の委員長の言葉は、渋滞時の車内環境がエコノミークラス症候群と同じ症状を引き起こすというのではなく、それと同じような環境的な要素があるということです。たとえばGWとはいえ道路に日差しがあたる日中では、渋滞時の車内は、狭い空間でのエアコン使用によって非常に乾燥した環境になっています。

またドライバーに限らず、同乗者も基本的にはシートベルトによって座席に固定された姿勢で座りっぱなし。加えてクルマの前後左右の窓からは、長時間にわたって体温上昇に関係する輻射熱(※1)を浴び続けている状態です。もともと人間は、汗や呼吸などから失われる水分(「見えない汗」ともいわれる不感蒸泄)を合わせると、60kgのオトナの場合で1日に900ml、だいたい一日1ℓの水分を自然に失っています。

渋滞時の車中では、その場の乾燥や輻射熱の関係から、さらに水分を失うといわれています。ところが、乾燥した車中では、出ている汗がすぐに蒸発してしまい脱水のサインを感じにくくなっています。つまり、、渋滞時の車中は、気がつかないうちにかくれ脱水になる環境であり、しかも深刻な脱水状態へ進行しやすい環境でもあるのです。

夏の車中は心配な環境

  • エアコンによる車内乾燥
  • 輻射熱による体熱の影響
  • シートベルトによって固定された一定の姿勢
  • 閉め切られた空間

※1 輻射熱とは、空気の存在に関係なく遠赤外線の熱線によって直接伝わる熱のこと。暖かい空気を送って暖めるエアコンのようなものではなく、空気を暖めることなく直接人体や室内の壁などを暖める。太陽の自然な暖かさも輻射熱によるもの。



集中しやすい人は熱中症になりやすい

ドライバーは、かくれ脱水になりやすい環境の中で周囲に気を配りながら運転しています。長く続く集中と緊張によるストレスによって神経を疲労させ、乾燥によって汗を直接感じないのですから、ドライバーの体温調整機能は人間の本来のものではなくなっています。さらに運転途中でのトイレ休憩を少なくするために水分摂取を控えることが多く、脱水状態が危険な状態にまで進行していくことを助長しています。

もちろん、輻射熱を浴びる乾燥環境に身を置き、シートベルトで固定された一定の姿勢で座っている同乗者、つまり車中にいる全員が、脱水への予防と対策をとるべきです。

服部委員長は「1~2時間に15分休憩。その際に100~200mlの水分補給をする」ことが基本だといいます。ドライバーの場合、1~2時間に1回休めば集中力の減退を防げます。次のパーキングエリアがしばらくないと分かった場合は、たとえ1時間弱しかドライブしていなくとも、次の休憩を優先しましょう。休憩時は、トイレだけでなく、乾燥しきった車内の空気を新鮮なものにリフレッシュし、外でカラダを動かすこと。また水分や少量の塩分の補給をしっかりすることを徹底します。

「キャビンアテンダントが何故水分を定期的に配るのか、を想像して欲しいですね」と服部委員長。エコノミークラス症候群の初期段階の症状は、まさに脱水状態から生まれるもの。渋滞時などの車中はエコノミークラス症候群を生む機内と環境がそっくりですから、休憩ごとのまめな水分補給は当然のことなのです。車内で飲む飲料も「緑茶やコーヒーではなく、麦茶などのノンカフェイン飲料にすることを勧めます」と服部委員長。もちろん、同乗者も利尿作用を促すアルコール飲料は避けるべきです。

熱中しやすい人は熱中症になりやすい

渋滞時の脱水ケア

  • 1~最長2時間に1回15分以上の休息
  • 休憩時に100~200mlの水分補給
  • 休息時に車中の空気をリフレッシュ
  • 休息時の車外でカラダを動かしてリフレッシュ
  • トイレに行くのを億劫がって水分摂取を控えない
  • カフェイン飲料を飲まない。同乗者はアルコールも控える
  • スポーツドリンクや経口補水液の常備


実践できる車中での対策とケア

高齢者や小児のいるご家庭でのドライブの場合、車内での席決めも重要なことです。輻射熱のことを勘案し、「席の中で直射日光が当たりにくい場所を選んで座らせてください」と服部委員長。最近では、窓に貼っても透明なまま遮熱するカーフィルムもあり、そうした商品を活用して輻射熱の少ない場所をつくるのもいいかもしれません。

高齢者の水分補給については「50~100mlを1時間に1回飲んで欲しい」。この感じが、いわゆる「こまめな」「ちょっとずつ」という表現に近いそうです。

実践できる車中での対策とケアはある

写真提供:スリーエム ジャパン株式会社
条件:スリーエム ジャパン 透明遮熱フィルム「ピュアカット89」使用。エアコンOFF後25分経過後、エアコンONにして約10分後

また、クルマを駐車場に停車する場合、幼児を車中に残しておかないこと。よく4cm(※2)窓を開けておけばいい、といわれているようですが、夏の暑い日など直射日光の下での車中は、エアコンを切って30分で熱中症によって生命を奪われた小児の例もあります。

GWとはいえ、晴れた屋外では避けた方がよいでしょう。「寝ているから、少し窓を開けているから、と理由をつけても、子どもを車内に放置したら、それは虐待なのです。実際、米国では買い物で子どもを車内に放置していれば通報され、虐待疑いで取り調べ、逮捕される事も」と服部委員長は警鐘を鳴らしています。

たとえば、休憩所に駐車したら、小児や高齢者を車中に残さず、家族全員で車外へ出て少しカラダを動かすこと。そして出来れば軽い食事としっかりした水分補給を。食べ物から水分と塩分そして少量の糖質を摂ることが、長いドライブ時の体調をケアします。

車内で、肌が「べたべた」したり、カラダが「だる」いと感じたり、カラダが少し「ふら」っとしたときなどは、すでに脱水状態の分類でいう初期(Ⅰ度)です。運転を止めて脱水対策として、経口補水液などを至急に摂ることです。以下に挙げる車中での脱水対策を、症状の前段階でとることを心がけて下さい。

高齢者や小児を含む車中対策

  • スポーツドリンクや経口補水液の常備
  • 透明でありながら遮断する窓用フィルムを貼る
  • 透明でありながら遮熱するカーフィルムを貼る
  • 高齢者の場合、1時間に1回50~100mlの水分補給
  • 休憩時に食事を摂る
  • 休憩時に外に出てカラダを動かす


クルマの中ではバックミラーや、フロントミラーで初期サインを見ることもできます。鏡で口の中を見ると湿潤しているのが普通ですが、確認してみて舌が白濁していたり口腔が渇いているようならすでに初期の脱水サイン。ドライバーの場合は運転を代わり、水分補給をして休みましょう。同乗者はワキが渇いていたり手が冷たくなっているかどうかもサインです。こうしたサインがある場合はとにかく近くの休憩場所を探して、まず休ませてもらうこと。服部委員長は、やって欲しいこととして「GWに長時間クルマを運転するご家族はぜひ車内にはスポーツ飲料や経口補水液を準備してください。そして、気づいた時に乾きを潤すことを心がけたいですね」と、移動時の脱水対策の基本を話していました。

車中における脱水状態の初期サイン

  • 口腔内が渇いている
  • ワキの下が渇いている
  • 手が冷たく感じる
  • 集中力がかけてくる
  • 手や脚の筋肉がつる

〈服部委員長からひとこと〉
・自分が安全に心がけても、他人の不注意の衝突で生命危機に!
・高速道路はもちろん、一般道路もシートベルトの着用、チャイルドシート使用の励行をお忘れなく!
・楽しいドライブを心がけましょう!

※2 4cmについて
◉JAFが「窓を閉め切った車内での温度変化をテスト」
春の最高外気温は23.3度だったが、車内室温は最高48.7度、ダッシュボードは同70.8度にまで達した。4枚の窓すべてを4センチ開けた車では、全閉した車より室温は低いものの、車内温度は最高38.9度まで上昇していた。「直射日光が当たるダッシュボードが熱源となるため、車内温度の上昇に、車種や外装色、外気温はあまり影響ない」としている。 JAF広報部は、「外は涼しいからから大丈夫という思い込みが、幼い子どもの熱中症事故を引き起こす原因」と指摘。「春でも、車内気温は真夏と同じぐらい上昇することを知ってほしい」としている。

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