かくれ脱水JOURNALは熱中症、脱水症対策の最新情報をお届けする情報サイトです

「かくれ脱水」の対策

かくれ脱水
更新日:2017/1/10
View29321

小中学生が学校で脱水にならないための対策とは?

小中学生が学校で脱水にならないための対策とは?

実は、小中学生は、脱水になりやすい生活環境の中にいます。 また、脱水ケアという視点で見ると、学校という特殊な環境が、 さまざまな問題をはらんでいます。 「小中学校の子供達は脱水になりやすい」という意識をしっかり持って、 十分な対策がとても必要な時代です。

靍知光先生

雪の聖母会聖マリア病院 小児外科診療部長 医学博士
靍知光(つる・ともみつ)

現在、日本外科学会 専門医・指導医、日本小児外科学会 専門医・指導医、日本静脈経腸栄養学会 認定医・指導医。他に日本外科代謝栄養学会評議員、日本腹部救急医学会評議員・編集委員、日本小児救急医学会評議員・ガイドライン委員、日本外科感染症学会評議員、日本機能水学会理事などを務める。専門(研究)分野は、小児・新生児外科、周術期代謝栄養学、経口補水療法(ORT)の臨床応用、小児胸腹部外傷の治療。著書に『新臨床外科学-小児悪性腫瘍(共著)』(医学書院)、『小児救急のストラテジー(共著)』(へるす出版)、『経腸栄養バイブル-小児(共著)』(日本医事新報社)など

小中学生の活動する力と環境が、
脱水になりやすい要素を生んでいます。

熱中症を防ぐための対策の第一は、脱水症を起こしやすい環境に注意を配ること。そして毎日の行動の指針となる情報をチェックして、日常生活で脱水をケアする習慣を身につけておくことです。
熱中症は①体液の不足で起こる障害、②体温上昇で起こる障害の総称です。高温の環境で運動や労働を行うと体温が上がり、体温を下げるために発汗が起こります。汗は蒸発するときに気化熱を奪い、“打ち水効果”で体温を下げる働きがあるのです。しかし、発汗で体液が失われ適切に補給しないと、カラダでの栄養素、酸素、老廃物の出し入れが滞り、さまざまな障害が起こります。これが脱水症。熱中症は、人間が本来持つ体温調節機構が働かなくなって、さまざまなカラダの臓器に障害が現れる状態。子どもはこの体温調節機構が未発達であり、高齢者はその機能が低下しているために、脱水になりやすいとされています。
小学生低学年の学童は、大人に比べるとまだ調節機能の余裕が完全ではありません。また、小学校高学年や中学生は、ほぼ大人に近い機能を持ちますが、学校の行き帰り、はじめてのクラブ活動、野外活動など、人生においてもっとも運動量が激しく増える時期を生きています。まだカラダが体温を調節することに十分に慣れていない状態でのアクティビティの増加ですから、脱水へのリスクは大きいと考えるべきです。
地球温暖化やヒートアイランド現象、あるいは近年の節電リスクなどに加え、校庭のコンクリート化や校内の緑の減少など、生活環境の激変によっても、小中学生の脱水へのリスクは大きくなり続けています。ところが、学校がそれにつれて、脱水への対策をさまざまとっているかというと、十分ではないのが現状です。つまり、小中学生の生活環境には、脱水になりやすい条件が揃っているのです。

小中学生は、予想以上に水分不足。意識して補水しましょう。

最近は、温度や湿度の変化が急激になってきました。梅雨から始まる夏場の暑い時期には、小中学生は、「かくれ脱水」になっているか、なりやすい状況にあるといっていいと、教えて!「かくれ脱水委員会」委員の靍先生は言います。
その対策は、意識して水分を摂ること。まずは食事を正しく摂取することが大切です。しかし、梅雨の時期から秋口までは、特に意識して、汗を多めにかいた時はスポーツドリンクなどを多めに飲ませるなど、周囲の気遣いが小中学生を守ります。

「暑さ指数」を覚えて、日々の活動の参考にしましょう。

「暑さ指数」とは、環境省が発表するWBGT計を参考にしたものです。WBGT(湿球黒球温度)計とは、気温・湿度・輻射熱(赤外線などを吸収した物体から発生する熱)の3つを取り入れた計算によって出される指標。国際基準で、暑い環境でのヒトの熱ストレスを評価しています。夏に身を守るには、気温だけではなく、《気温+湿度+熱》で、その日の水分補給や行動を微調整する。屋外活動や閉め切った室内でのクラブ活動など、運動量の多い小中学生の熱中症対策として、夏の新しい習慣にしていきましょう。これは、小中学生を指導・監督なさる皆さんに、ぜひ知っておいてもらいたい大事な知識です。

AEDを使いこなすように
脱水の知識と経口補水液を活用する。

雪の聖母会聖マリア病院 小児外科 診療部長 医学博士
靍 知光(つる ともみつ) 先生 談

学校は、特殊な閉鎖された環境です。指導者の方々は、それぞれが大変に努力され、子供達の健康に気を使われていると思いますが、残念ながらすべての指導者が科学的裏付けを持って、彼らの健康を管理されているわけではありません。
少し前の時代は、全国のどの学校でも体育やクラブ活動のときには「水を飲むな」といわれていました。これは半分正解です。脱水状態のときに水だけを飲むと、体液が薄くなりより脱水症状が進んでしまいます。しかし、平素から水分と塩分の両方を補給していれば、脱水への危険は減少します。つまり、昔の先生達の叱咤激励は半分正しくて半分間違い。これこそ学校での指導が、個人の知識や姿勢に頼ったために起こる間違った常識が拡がってしまったよい例です。
また、どうしても集団での管理が必要ですから、脱水への耐性の個人差がおざなりにされがちなようです。体力的に辛くとも頑張っていることに美徳を感じる精神性もありますから(昔からの根性論)、学校では自らの体調を指導者へ伝えにくい空気があります。 精神的な頑張り・「なにくそ!」という気合いもたしかに大切な部分ではありますが、地球温暖化やヒートアイランド現象、それに校庭での緑の減少など、学校を取り巻く社会全体が激変していますから、もっと子供達の周囲にいる人々が、日頃から彼らの脱水・体調に気を使っていただきたいと思います。

涼しくなる秋口に救急搬入されることが多いのも、体育祭、体育祭の練習中、それにクラブ活動中に起こす脱水症からです。秋口でも、最近は気温の変化が激しく、少し油断すると、子供たちはみんな頑張ろうとして無理をするので、そうした事態を引き起こします。 毎年毎年、どうして同じことが起きるのでしょう? 私たちは、もっと学習しなければいけません。まわりの大人が子供達を守るため、より深い脱水や経口補水液などについての知識をバックグラウンドに持っておくべきだと思います。 今、学校に備えられているAEDを、いざという時にきちんと冷静に使える先生方はどれ位いらっしゃるでしょう?いざ心臓が止まった人間を目の当たりにすると、基本的な対処法も忘れるのが一般の大人です。AEDも大切ですが、それと同じくらいに、脱水について正しい知識を身につけて、上手に経口補水液を脱水予防・症状の改善に使って欲しい。
突然の心停止と同じように、脱水でも重症化して亡くなることがある。そんなことをこれ以上繰り返してはいけません。 屋外スポーツや体育祭だけでなく、柔道やバトミントンなど会場を閉め切っておこなう室内競技でも、脱水のリスクは上昇します。 指導者の方々には経口補水液を予防的にどう投与すべきか、どうすれば競技中も良いパフォーマンスが発揮できるのか、体液管理についてぜひ学んで頂きたいと思います。

医療費給付件数からみた校種・学年別熱中症発生件数

※独立行政法人日本スポーツ振興センター東京支所(茨城、栃木、群馬、埼玉、千葉、東京、神奈川、新潟、山梨、長野各県)で給付した熱中症に係る医療費給付件数(平成18~20年度)

熱中症の予防は、脱水症を予防することが基本です。

熱中症の予防の基本は脱水症の予防。そのためには外的な予防と内的な予防があります。外的な予防は、脱水症を起こしやすい環境の改善。内的な予防は脱水症に対する防衛体力を養うことです。

[外的な予防]

  • 暑さを避ける服装になる
  • 気温、湿度を下げる
  • 風通しを良くする
  • WBGT計を用いた指針を守る
  • 無理な節電をしない

*WBGT(湿球黒球温度)計とは、気温・湿度・輻射熱(ふくしゃねつ/赤外線などを吸収した物体から発生する熱)の3つを取り入れた指標。数値により熱中症に関して「ほぼ安全」「注意」「警戒」「厳重警戒」「運動は原則中止」という5段階にわけられます。これに従い、無理な労働や運動をしないことが大切です。

[内的な予防]

  • 無理なダイエットなどで食事や飲み物を制限しない
  • 十分な水分と電解質を補給する
  • 睡眠をしっかり取って休息する
  • 適度な運動で筋力を保ち、汗がかける体質になる

※発汗を伴うような運動では、水分と電解質の補給を欠かさないようにしてください。

小中学生の脱水状態のケアには、経口補水療法を。

上記で靍先生がいわれる経口補水液とは、脱水症状のとき注射や点滴ではなくその成分とよく似た、水に塩分などの電解質と糖とがバランスよく配合された液体を口から摂取して回復させる経口補水療法(ORT:Oral Rehydration Therapy)に使われるものです。
脱水症とは「カラダから水分が失われるだけでなく、電解質も同時に失われている」状態ですから、経口補水液はいわばカラダが失った体液を、飲んで補う水ということ。体重50kgの人が1~2%の体重の減少をみた場合で、1日に経口補水液をゆっくり500ml~1000ml摂取するというのが目安です。カラダから失われる体液量に併せて適宜増減して摂取しましょう。

小中学生へ。こんなときは、経口補水液が効果的です。

夏の脱水状態の見分け方は、「べた」「だる」「ふら」「いた」。

熱中症を防ぐために脱水に関する啓発を進めている、教えて!「かくれ脱水」委員会の服部委員長が作った、夏の脱水症状サイン。普段の生活の中で、経口補水液を摂る早期対応の目安です。「かくれ脱水」JOURNAL、「脱水症から熱中症が起こります」にある熱中症の分離法のうちⅠ度の症状を見逃さず、以下をカラダの声を聞くための手引きとして活用してください。

「べた」は、肌がべたべたしてくること

夏の蒸し暑さなどのいやな感じで、皮膚がべたべたした感じになること。スポーツドリンクやイオン飲料などで、水分や電解質を摂ることをお勧めします。

「だる」は、やる気や活気の低下

脱水の初期から現れる症状です。カラダは水分を欲しがりますが、水分だけの飲用は低ナトリウム血症などへつながります。電解質を含む飲料である経口補水液での失った体液の補水が脱水の進行を防ぎます。

「ふら」は、めまいや立ちくらみ、「ふらっ」とする状態

熱中症のⅠ度の状態が進んでいます。嫌な汗をかき、なかなか汗がとまらなくなるときがあります。ほっておくと脳症状=血圧低下につながり、水分だけを摂ると低ナトリウム血症を引き起こす段階です。

「いた」は、足がつったり、頭痛が現れている状態

熱中症ではⅡ度に分類される症状に近くなっています。自覚できる症状として、カラダのさまざまな場所に辛いこむら返りや、とくに顔に熱っぽい状態が起こります。すぐに経口補水液を摂取し、改善しない場合は医師の判断を仰いでください。

「小中学生の脱水対策」の記事は役に立ちましたか?

みんなの投票を見る

Loading ... Loading ...