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東日本大震災から2年 災害時には脱水に注意 避難場所でリスク増加 二次災害を防ぐための備えは?



東日本大震災の発生から2年。今なお、多くの方が仮設住宅での生活など厳しい環境での生活を強いられています。未曾有の被害をもたらした震災を通して、私たちはいざというときの備えの大切さを学びました。「教えて!『かくれ脱水』委員会」では、災害時における脱水のリスクを呼びかけ、電解質を含む飲料の備蓄をすすめています。

避難場所で高まる脱水のリスク


1.突然襲いかかる災害と脱水症のリスク

地震などの大規模な自然災害は突然襲いかかってきます。緊急時のために各地域においては避難場所が用意されており、災害救助物資が備蓄されていますが、いざ災害が起こると、避難場所での脱水症の発生が見られることが報告されています。
避難所において脱水のリスクが高まる要因としては、以下の点が挙げられます。

 ① 規則正しい食事や水分摂取が難しい
 ② トイレ設備が不十分であるために、食事や水分摂取を控えてしまう
 ③ 心理的ストレスや慣れていない集団生活の中で食欲が低下する
 ④ 感染症などで発熱・下痢および嘔吐を起こしやすい
 ⑤ 避難場所の暖房・冷房設備が充実していない

私たちは一日に飲み物から1,200ml、食べ物から1,000mlの水分を補っていますが、緊急時は充分な摂取が困難になります。衛生管理が充分とはいえない環境に多くの人が集まるため、感冒やインフルエンザ、ノロウイルスに代表される感染性胃腸炎などの感染症が広がりやすくなります。これらの感染症に伴う発熱での大量発汗、下痢や嘔吐によって、電解質を含んだ体液が多く失われます。
冬場は寒さのためにインフルエンザなどの感染症になりやすく、夏場は冷房が充分に機能せず熱中症になる危険があります。

もちろん、各避難所においてはたくさんの飲料が備蓄されています。しかし、それらの備蓄飲料は多くが真水であり、脱水症への対策としては充分とはいえません。そもそも「脱水」とは、水分だけでなく、ナトリウム(Na)やカリウム(K)などの電解質を含んだ体液が減少した状態をいいます。体液は、栄養素や酸素を運ぶ、老廃物を排泄する、体温を調整する、カラダの様々な機能を維持する、といった役割を担っており、カラダから体液が不足して脱水になると、こうした機能がうまく働かなくなってしまいます。そのため、脱水状態さらには脱水症になった場合、その対策として電解質を含まない真水を補給するだけでは不充分であり、できるだけ体液に成分が近い飲料を摂取することが重要になります。
また、大規模災害において脱水症が起こり得るのは、避難している人たちだけではありません。厳しい環境で重い救助物資を運んだり、救護活動をしたりする災害ボランティアも、被災者と同様に脱水症を起こしやすいのです。

二次災害としての脱水を防ぐために


2 .二次災害としての脱水、その対策に必要な備えは?

避難所や救援活動の現場で起こる健康被害は、二次災害であるといえます。東日本大震災を受け、家庭における防災用品の準備への意識が高まりましたが、できれば二次災害への備えもしておきたいところです。脱水状態や脱水症になった場合、その対策として真水を補給するだけでは充分とはいえません。脱水とはカラダから水分だけでなく電解質も失われた状態なのです。
 そこで、水分とともに電解質も効率的に摂取できる飲料として、東日本大震災における保健活動等で活用されたのが、経口補水液です。経口補水液(ORS:Oral Rehydration Solution)とは、水に塩分などの電解質を含み、それらの吸収スピードを速める糖がバランスよく配合された飲料で、「飲む点滴」ともいわれています。3月のまだ寒い時期に起きた東日本大震災では、震災発生から2~3週間後にノロウイルスなどの感染症が避難所に広がったという事例もありました。高齢者を中心に下痢や嘔吐で脱水症となり、深刻な状況に陥ることが心配されたものの、医療ボランティアや入院設備は限られ、点滴による輸液処置が充分に行き届かないという緊急事態。しかし、支援物資として届いたペットボトル型の経口補水液を飲んでもらうことで、ほとんどの患者について症状の改善につながったという声が報告されています。意識障害などを伴う重度の脱水症については点滴による治療が必要になりますが、そこに至る前の軽・中等度の脱水症であれば、経口補水液の補給で充分対応可能です。現場での早期治療、感染対策が二次災害の深刻化を防ぐのです。


3.経口補水液の備蓄のすすめ

東日本大震災の経験を受け、経口補水液の備蓄をおこなう医療・保健機関が少しずつ増えてきています。静岡県内のある病院では、災害対応用の自動販売機を病棟内に10台以上設置し、そのなかでペットボトル型の経口補水液を取り扱っています。これらの自動販売機は「ライフラインベンダー」と呼ばれ、平常時には自動販売機として機能し、災害時には手動操作で商品を取り出すことができます。また、災害時救援物資が到着するまでの間は販売機の中の商品が無償で提供されるというものです。
市販の経口補水液には、ペットボトル型のほかにゼリー型のものもありますが、特別用途食品(個別評価型病者用食品)に指定されているため、基本的には医療・保健機関やドラッグストアでのみ販売されており、一般の自動販売機やスーパー、コンビニエンスストアでは売られていません。そのため、緊急時にすぐに手に入るとは限りません。ご家庭の防災用品のひとつとして、平常時からご用意されることをおすすめします。
突然襲いかかってくる自然災害。被害を最小限に食い止めるためにも、日ごろの防災を心がけましょう。