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日本整形外科学会学術総会で筋痙攣と電解質との関係を新発表



梅雨前というのに全国で夏日となった2017年5月21日(日)、仙台市の東北大学百周年記念会館において第90回日本整形外科学会学術総会が開催され、ランチョンセミナー36『運動誘発性筋痙攣の発生機序における電解質の関与 – 経口補水液を用いた研究から -』と題する講演が行われました。

講師はオーストラリア・エディスコーワン大学の野坂和則教授。教授がこの講演で発表したのは、運動パフォーマンスと関係の深い筋痙攣に、電解質が深く関わっていることを示す研究の成果。筋痙攣への電解質の関与を疑問視する論考が多い現状に一石を投じる、新たな知見ともいえるもので、参加した多くの専門家たちの注目を集めるものでした。

実験では、ふくらはぎに電気的な刺激を与えて筋痙攣を生じさせる周波数(筋痙攣が低い周波数で生じるほど筋痙攣が起こりやすいことを示す)から、筋痙攣の起こりやすさを評価。高温環境下の運動により体重の2%程度の脱水を引き起こす前後で、運動後にミネラルウォーターを与えた場合と電解質を含む経口補水液を与えた場合とで筋痙攣の起こりやすさを比較しました。

その結果、脱水自体では筋痙攣の起こりやすさには変化が見られませんでしたが、ミネラルウォーターを摂取した後には筋痙攣が起こりやすくなり、経口補水液(実験ではOS-1(ナトリウムイオン50mEq/L, カリウムイオン20mEq/L, クロルイオン50mEq/L, ブドウ糖1.8%)を使用)を摂取した場合には、筋痙攣が生じにくくなりました。運動中に経口補水液を摂取することで筋痙攣は起こりにくくなり、ミネラルウォーターを摂取した場合には筋痙攣が起こりやすくなることも他の実験から明らかになりました。

発表後、野坂教授は「スポーツパフォーマンスにとって筋痙攣は明らかにマイナスです。競技後半に生じる筋痙攣によって、パフォーマンスの低下が生じることを避ける必要があります。今回の実験結果では、電解質が筋痙攣の予防に役立つことが示されました。今後は、運動前に摂取したらどうか、電解質の中でも何が効果を生んでいるのか、経口補水液に含まれる糖(グルコース)との関係なども調査し、何をいつ、どのように(温度など)摂ることが筋痙攣の予防効果を最大にしていくのか、実験を重ねて考察していこうと考えています」と、今後の課題を語っていました。

熱中症の症状分類では、体温調節機構が破綻して体温上昇が起こる手前の初期段階(Ⅰ度)のとき、めまいや発汗と共に筋痙攣も症状のひとつだとされています。今回の野坂教授の研究は、運動によって生じる筋痙攣を対象としていますが、一般の人々においても脱水状態で水を飲むと脚がつりやすくなることを示唆しています。経口補水液がその対処に効果的なのか、解き明かしてくれるものかもしれません。