熱中症と脱水症状に専門家が発信する正しい情報を!隠れ脱水JOURNAL

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AEDを使いこなすように脱水の知識と経口補水液を活用する

雪の聖母会聖マリア病院 小児外科 診療部長 医学博士靍 知光(つる ともみつ) 先生 談

学校は、特殊な閉鎖された環境です。指導者の方々は、それぞれが大変に努力され、子供達の健康に気を使われていると思いますが、残念ながらすべての指導者が科学的裏付けを持って、彼らの健康を管理されているわけではありません。

少し前の時代は、全国のどの学校でも体育やクラブ活動のときには「水を飲むな」といわれていました。これは半分正解です。脱水状態のときに水だけを飲むと、体液が薄くなりより脱水症状が進んでしまいます。しかし、平素から水分と塩分の両方を補給していれば、脱水への危険は減少します。つまり、昔の先生達の叱咤激励は半分正しくて半分間違い。これこそ学校での指導が、個人の知識や姿勢に頼ったために起こる間違った常識が拡がってしまったよい例です。

医療費給付件数からみた校種・学年別熱中症発生件数

また、どうしても集団での管理が必要ですから、脱水への耐性の個人差がおざなりにされがちなようです。体力的に辛くとも頑張っていることに美徳を感じる精神性もありますから(昔からの根性論)、学校では自らの体調を指導者へ伝えにくい空気があります。 精神的な頑張り・「なにくそ!」という気合いもたしかに大切な部分ではありますが、地球温暖化やヒートアイランド現象、それに校庭での緑の減少など、学校を取り巻く社会全体が激変していますから、もっと子供達の周囲にいる人々が、日頃から彼らの脱水・体調に気を使っていただきたいと思います。

涼しくなる秋口に救急搬入されることが多いのも、体育祭、体育祭の練習中、それにクラブ活動中に起こす脱水症からです。秋口でも、最近は気温の変化が激しく、少し油断すると、子供たちはみんな頑張ろうとして無理をするので、そうした事態を引き起こします。

毎年毎年、どうして同じことが起きるのでしょう? 私たちは、もっと学習しなければいけません。まわりの大人が子供達を守るため、より深い脱水や経口補水液などについての知識をバックグラウンドに持っておくべきだと思います。

今、学校に備えられているAEDを、いざという時にきちんと冷静に使える先生方はどれ位いらっしゃるでしょう?いざ心臓が止まった人間を目の当たりにすると、基本的な対処法も忘れるのが一般の大人です。AEDも大切ですが、それと同じくらいに、脱水について正しい知識を身につけて、上手に経口補水液を脱水予防・症状の改善に使って欲しい。

突然の心停止と同じように、脱水でも重症化して亡くなることがある。そんなことをこれ以上繰り返してはいけません。

屋外スポーツや体育祭だけでなく、柔道やバトミントンなど会場を閉め切っておこなう室内競技でも、脱水のリスクは上昇します。

指導者の方々には経口補水液を予防的にどう投与すべきか、どうすれば競技中も良いパフォーマンスが発揮できるのか、体液管理についてぜひ学んで頂きたいと思います。

※独立行政法人日本スポーツ振興センター東京支所(茨城、栃木、群馬、埼玉、千葉、東京、神奈川、新潟、山梨、長野各県)で給付した熱中症に係る医療費給付件数(平成18~20年度)

熱中症の予防は、脱水症を予防することが基本です

熱中症の予防の基本は脱水症の予防。そのためには外的な予防と内的な予防があります。外的な予防は、脱水症を起こしやすい環境の改善。内的な予防は脱水症に対する防衛体力を養うことです。

[外的な予防]

  • 暑さを避ける服装になる
  • 気温、湿度を下げる
  • 風通しを良くする
  • WBGT計*を用いた指針を守る
  • 無理な節電をしない

*WBGT(湿球黒球温度)計とは、気温・湿度・輻射熱(ふくしゃねつ/赤外線などを吸収した物体から発生する熱)の3つを取り入れた指標。数値により熱中症に関して「ほぼ安全」「注意」「警戒」「厳重警戒」「運動は原則中止」という5段階にわけられます。これに従い、無理な労働や運動をしないことが大切です。

[内的な予防]

  • 無理なダイエットなどで食事や飲み物を制限しない
  • 十分な水分と電解質を補給する
  • 睡眠をしっかり取って休息する
  • 適度な運動で筋力を保ち、汗がかける体質になる

※発汗を伴うような運動では、水分と電解質の補給を欠かさないようにしてください。

小中学生の脱水状態のケアには、経口補水療法を。

更新日:2013/06/07

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