熱中症と脱水症に専門家が発信する正しい情報を!隠れ脱水JOURNAL

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発表します!「かくれ脱水」発見法(高齢者用)

教えて!「かくれ脱水」委員会では、高齢者の「かくれ脱水」を、あらためて定義。「かくれ脱水」の可能性を簡単に調べるための、新しい「かくれ脱水」チェックシート(高齢者用)をつくりました。脱水は、「かくれ脱水」の段階で発見し、素早く対処する。こま目にチェックして、暑い夏をのりきってください。 出典:高齢者に存在する「脱水症」の前段階“かくれ脱水” を定義する/―400名を対象とした感度分析の結果から”かくれ脱水発見チェックシート”の提案―谷口英喜ほか Geriat.Med.2014年5月号(vol.52 no.5)

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カラダから水分と電解質(イオン)が不足するのが脱水です。脱水が進行して様々な症状(脱水症状)が出てきてしまうのが脱水症です。そして、脱水症の一歩手前で、具体的な症状が現れる前段階が「かくれ脱水」。教えて!「かくれ脱水」委員会では、この脱水症状が現れる前の段階のカラダの異常に気づき、いち早く食生活の改善や補水などの対策をとっていくことを提案してきました。

ただ、「かくれ脱水」では、まだはっきりとした症状がなく、カラダが普段の状態に近いために、気づかずにどうしても「かくれ脱水」状態を放っておく人が多いのです。そして、症状に気づいた頃には、すでに脱水症へ移行していることも多く見られました。脱水が進むと、体温を調節する能力が低下しますので、暑い夏には「熱中症」にかかりやすくなります。

年々、熱中症による搬送者が増加しているいま、もっと早くわかりやすく「かくれ脱水」の可能性を調べ、早く脱水への対処をしていくための「脱水対策の指針」づくりは急務です。

教えて!「かくれ脱水」委員会では、あらためて「かくれ脱水」を定義し、その可能性をいち早く調べるチェックシートをつくりました。

これは、谷口英喜副委員長を中心に、靍知光委員らが参加した研究チームが、高齢者400名を対象に調査して提示したもの。体内の水分不足からくる高張性脱水症の診断基準として用いられている血清浸透圧を追跡計測しながら、その増加具合によってカラダにどのような変異がみられるかについて調査、分析(61項目)して作成されました。

新・「かくれ脱水」チェックシートは、脱水症の高リスク者である高齢者の「かくれ脱水」の可能性を、3ステップのスクリーニングで簡単に調べることができます。高齢者が自分でも判断しやすく、周囲の家族などの介護者が観察しやすい内容となっています。週に一回程度、暑い夏にはこまめにこの3ステップをスクリーニングしてくだ

高齢者における「かくれ脱水」の定義

カラダの水分(水と電解質などからなる体液)量は年齢によって変わります。

成人男子で体重の60%、65歳以上の高齢者では水分の貯蔵庫でもある筋肉量の減少などにより、50%程度まで減少します。

通常、成人では、一日に、カラダの水分が1,500~2,500ml程度失われ、同等の水分を飲食によって補給してバランスをとっています。高齢者は、カラダの水分量の減少に加え、この飲食による摂取量が少なくなりがちです。さらに高齢者はのどの渇きを感じにくくなることで、日常生活での水分摂取も遅れがちです。つまり、高齢者であることは、そのまま脱水症の高リスク者であるということです。

「かくれ脱水」とは、からだの正常な状態と脱水症の間にある「脱水症前段階」のこと。高齢者の場合、カラダの1%~2%の体液が失われている状態をいいます。2%以上になると脱水症の危険性は一気に高まります。もともと高齢者のカラダの水分は少ないのですから、すぐに重大な症状に進行すると考えてください。

教えて!「かくれ脱水」委員会 委員長
社会福祉法人 枚方療育園 医療福祉センター さくら 院長
兵庫医科大学 特別招聘教授 医学博士

服部益治(はっとり・ますじ)

日本小児科学会 (専門医)、日本小児保健協会会員、日本腎臓学会 (指導医・専門医)、兵庫県小児科医会 (顧問)、日本夜尿症学会(常任理事)など。著書に、『腎・泌尿器疾患診療マニュアル(共著)』(日本医師会)、『腎臓病の食事指導ハンドブック(共著)』(南江堂)、『保健医療ソーシャルワーク実践(共著)』(中央法規出版)、『子どもの臨床検査-脱水(共著)』(診断と治療社)など

更新日:2014/05/13

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