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注意!職場の熱中症 シェフ、気をつけて! 調理場の働く環境が熱中症を生む

産業医の山田琢之委員が、熱中症・脱水症リスクの高い職場を分析。その予防や対処について詳しく解説する「注意!職場の熱中症」シリーズ。今回は、人々に日々の糧となる美味を生み出す職場「調理場」に働く人々に着目。

朝が早い、時間に追われる、集中せざるをえない作業では強力な火力を使う。お客さまありきで、スピード勝負のさまざまな立ち仕事をおこなう調理場は、注文がラッシュする時間帯では、エアコンさえ効き目を無くすほど。調理場の働く環境は、驚くほど熱中症・脱水症リスクが高いものです。本格的な暑さがはじまる夏を前に、調理場に潜む、熱中症・脱水症へつながる多様な要素を知り、適切な予防と対処を心がけてください。安心して働くための、いま、役立つ情報をまとめています。 監修:愛知医科大学客員教授 なごや労働衛生コンサルタント事務所長 エスエル医療グループ栄内科院長  山田琢之

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調理場で働くの方々が、夏場安全に働くためのQ&A

Q1:調理場あるいは調理に従事する方々には、どのような熱中症・脱水症リスクがあるのでしょうか?

A1. その環境自体が熱中症・脱水症になりやすい環境だといえる

ホテルなど大きな調理場がある仕事場では、近年になって細かな熱中症への対策指導がおこなわれはじめています。しかし、街中の中小のレストランでは、まだまだ熱中症や脱水症への対策が遅れているといっていいと思います。

第一に、調理場自体が、非常に高い熱中症に至りやすい環境なのです。環境省が発表している「熱中症対策マニュアル」では、熱中症の生じやすい作業環境を「高温・多湿で、発熱体から放射される赤外線による熱(輻射熱)があり、無風な状態」と書かれています。調理場の環境はどうでしょう? まず、一般の家庭よりかなり強力な火力を使います。また、始終、熱湯を沸かすことによる湯気が充満し、始終水が流れている湿度の高い環境です。エアコンがあっても、いっせいに仕込みをする時間帯やランチタイムなど激しく火力を使用する時間帯では、室内は30℃以上があたりまえ、場所によっては40℃近くなるなど、まさに高温多湿な環境。小さな食堂の調理場では、裏戸や窓を全開にして風の通りを良くしているところもありますが、多くは風の通りが悪い密閉された室内となっています。また、直接に火力を浴びていなくとも、オーブンなどの熱を持つ厨房機器からでる輻射熱は室内の気温とは関係なくカラダの温度上昇を招きます。

つまり調理場は、熱中症・脱水症になりやすい働く環境といえるのです。とくに、中華系の調理場は、熱効率のいいコンロを一日中使っていますから、調理場で作業をしているだけで大汗がでる環境といっていいでしょう。日頃から一層の注意が必要です。

調理場の熱中症・脱水症リスク【環境】

■ 風が通らない室内
■ 強力な火力を使う
■ 高温多湿
■ 輻射熱による体温上昇
■ エアコンが効かない
■ 熱効率のいいコンロを多用する中華系はとくに注意

Q2. 環境のほかにどのようなリスクがありますか?

更新日:2016/6/20

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