熱中症と脱水症状に専門家が発信する正しい情報を!隠れ脱水JOURNAL

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Q2:環境のほかにどのようなリスクがありますか?

A2. 調理の際の服(コックコート・厨房着)は熱中症・脱水症になりやすいという宿命があります。

前出、環境省の「熱中症対策マニュアル」を見ると「熱中症の生じやすい典型的な作業は、作業をはじめた初日に身体への負荷が大きく、休憩をとらずに長時間にわたり連続して行う作業」とあります。加えて、「通気性や透湿性の悪い衣服や保護服を着用して行う…」とあります。

調理師の服装では、多くのシェフたちが着る作業着であるコックコートなどの厨房着の問題があります。よく剣道着や柔道着は、その厚みで熱がこもってしまいがちといわれますが、コックコートなども同様で、折り目の細かい分厚い布で耐熱効果のある素材でできています。調理のときは熱くなった油や食材を扱いますし、ほとんどのキッチンにはとても熱いスープやシチュー類の液体を入れる「ズンドウ」と呼ばれる大きなステンレス鍋があります。それを持ち運びする時の安全対策としても着用が必要なのです。通気性や透湿性は期待できませんから、どうしても衣類の内側に熱がこもりやすく、服の下は汗まみれということになります。

ベーカリーなどでは、オーブンによるやけど対策のためにやはり厚めの厨房着を着用します。輻射熱は、室温に関係なく身体に届きますから、厚い厨房着の内側で温まった身体の熱は逃げ場のない状態にあると思ってください。また、とくに中華系の方々は、調理方法の特徴として、わりとカラダを動かすことが多いために、筋肉が生み出す熱が耐熱の厚い厨房着にこもってしまい、厨房着の中の環境は劣悪な状態になっているはずです。

対策としては、なるべく休憩のときにコックコートや厨房着の前をはだけて放熱すること。できれば脱いで風や冷気を通すことを心がけて欲しいと思います。作業の安全のために必要な厨房着なのですが、それ自体がリスクを含んでいることを自覚しておいて欲しいと思います。

Q3:作業時間によってリスクが違うのでしょうか?その対処についても教えてください。

A3. ランチタイムや早朝の仕込みにリスクが集中

厨房着の問題に加えて作業時間帯や長さの問題があります。たとえば大きなホテルでは、パンを自前で焼くところが多く、その作業開始時間は午前2、3時頃から仕込みをはじめ、朝6時の焼き上げに間に合わせるというスケジュールです。調理師に多い腰痛は筋肉がまだほぐれていない午前中に多発することはよく知られていますが、実は午前中、人間の身体は自然と軽い脱水状態になっています。朝の体脂肪率が高いのはその証拠でもあります。

一般に、身体の水分が安定してくるのは昼近くだと言われています。ホテルのベーカリー担当ほどのことはなくとも、和洋食の仕込みなど、ホテルのように大きな調理場を持つ職場では朝の早い労働がつきものです。熱中症に至ることが多いのは気温が上がる午後になりますが、早朝作業がもたらすカラダへのリスクは大きいと考えてください。

対策として、作業前に、起床時に脱水ぎみの身体であることを自覚し、水分と同時に電解質も摂ることを心がけてください。可能であれば、朝食をきちんと摂ること。必要な水分や塩分が摂れます。時間がない場合には、経口補水液を摂ることも良いと思います。

また、ランチタイムのオーダーラッシュ時、ホテルなどでの宴席で数百人分を一度に仕込むときなど、90分〜2時間もの間、ミスの許されない集中した作業が続きます。調理の仕事はお客さまありきですから、休憩を挟む作業リズムを自分では決めにくいもの。自分で自覚して手を休めるときに水分をこま目に摂ること。作業中の場合、塩分に関しては味見などで摂っていることが多いので、水分を補うことで十分ですが、あまり味見をしない係の人は、水分と塩分の摂取をこころがけてください。

調理場の熱中症・脱水症リスク【作業】

・早朝作業
・厚く、通気性・射放性のないコックコート・厨房着を着用
・ランチタイムなど長時間集中作業
・自分で作業リズムをコントロールしにくい
・輻射熱による体温上昇

職場の管理者の方々へ。熱中症についての分類と、その対策を知っておきましょう。

熱中症は「どのくらい症状が重たいか」という重症度により、Ⅰ度、Ⅱ度、Ⅲ度の3つに分類されます。

[熱中症の新分類]

Ⅰ度 めまいやたちくらみを自覚する/筋肉痛やこむら返り(脚がつる)がある 拭いても拭いても汗がどんどん出てくる
Ⅱ度 頭痛、悪心(吐き気)、嘔吐を認める つかれやだるさといった全身倦怠感を自覚する
Ⅲ度 意識障害を認める/けいれんが起こる/体温が高くなる

Q4:産業医として、調理場で働く方々へご助言をお願いします

更新日:2016/6/20

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