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山という環境では、脱水・熱中症になって救助要請しても、病院に行くまでに時間がかかり、その間に症状が悪化する場合があります。したがって平地以上に、脱水に対する事前の予防が重要です。
予防の基本はこまめ、早めの水分補給。山に登る前に500mlほどの水分を摂り、最低2ℓの水分を携行。30分おきに200~250mlを目安に水分を補給し続けます。山では50分歩いて10分休むというペースが一般的のようですが、25分歩いたら5分の休みを取り、その間に水分を摂りましょう。
高山などの極度に乾燥する環境下で、登山のような激しい運動をすると、呼吸数が増えて吐く息などから不感蒸泄として水分が大量に失われるため、脱水対策として多量の水分と塩分が必要になります。
しかし経口補水液やスポーツドリンクをそのままの濃度で何リットルも補給すると、塩分が過剰になり、水分のみの補給では塩分が不足することに。
「脱水時に皮膚にかけてカラダを冷やしたりするなど、山では真水がいちばん利用価値が高いので、私自身は経口補水液やスポーツドリンクのパウダー(粉末)を携行し、必要に応じてパウダーを真水に溶かして塩分などの電解質と糖質を補います」と大城委員。
もちろん、夏の低山においても、平地とは違い涼しく乾燥しやすい環境ですし、急な坂道を上下するのですから、トレッキング程度でも、たっぷり汗をかくものです。十分意識して、こまめ、早めの水分補給を心がけて下さい。
登山するルートや山の環境によっては2ℓの水では足りないこともあります。事前に登山ルート近くにある水場を確認し、必要に応じて携行する水を増やしましょう。途中で水が手に入る場合、必要に応じて水を買うようにすると良いでしょう。
十分な水分を摂取していると、尿意も自然に高まります。女性などは自分からトイレに行きたいとアピールしにくいので、リーダーや山岳ガイドが率先してトイレタイムを取るようにしてください。水を飲んでいるのに尿意がないのは、意識しない軽い脱水状態「かくれ脱水」のサインです
予防には食事も大切。体力が落ちないように食べ物からエネルギー源となる糖質を適宜補給すること。糖質を摂るとカラダの主要なエネルギー源である体脂肪(カラダに蓄えている脂肪)を使いやすい体内環境が整います。
糖質は、アメやチョコレートのようにすぐにエネルギー源になる糖類、おにぎりやパンのようにゆっくりエネルギー源になるでんぷん類を組み合わせると効果的。山では最低でも2時間に一度は糖質を摂るようにします。
最後に無駄な発汗を減らす努力も予防とつながります。
「みなさんスタート地点で快適な服装で登ろうとしますが、それでは動くとすぐに汗が出てきます。スタート地点では、少し肌寒いくらいの服装でちょうど良いのです。
暑くなったら服を脱いで発汗を抑え、寒くなったら服を着るように心がけます。肌に直接触れるウェアは、かいた汗を効率的に蒸発させる吸湿や速乾性に優れたものを選んでください」。
更新日:2019/07/01