熱中症と脱水症に専門家が発信する正しい情報を!隠れ脱水JOURNAL

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サイクルスポーツを楽しむすべての人へ 前もっての準備!サイクルスポーツの脱水対策

近年、ブームが続くサイクルスポーツ。とくに長距離を走るロードレースは、脱水との戦いともいえます。サイクルスポーツの脱水症・熱中症リスクとその予防や対処について、富和清訓ドクターと、チーム・シエルヴォ奈良の山下貴宏選手がトーク。レースに役立つ情報満載の対談は、自転車ファン必読です!

かくれ脱水JOURNALでは、暑い季節の前に、ご自身が本格的なロードレーサーであり、レースドクターとしても活躍する富和清訓先生と、日本のトップ選手の1人、山下貴宏選手による、ロードレースにおける脱水リスクと、その適切な予防と対処についてのトークを緊急企画。ロードレースを目指す方だけでなく、サイクルスポーツを愛する方々すべてに、今、読んでいただきたい対談となりました。 監修:社会医療法人田北会 田北病院 整形外科 富和清訓 お相手:シエルヴォ奈良所属 山下貴宏選手
(2015年取材当時)

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前もっての準備!サイクルスポーツの脱水対策

ロードレースは究極のスポーツ。脱水リスクはつきものです

ロードレース流、ウェアと経口補水液の活用法

スポーツは、いつも脱水に注意!

脱水症・熱中症の基礎知識

  • かくれ脱水JOURNALには、脱水や脱水症、熱中症についての詳細な記載がありますが、本対談に興味を持ちはじめて読まれる方に、脱水症と熱中症についての基礎知識です。最初にお読みください。

    脱水症予防が熱中症予防につながる

ロードレースは究極のスポーツ。脱水リスクはつきものです

まず、ロードレースの脱水症リスクについてお教えください。

ロードレースは脱水リスクだらけ

■スピード疾走は集中が続く
■屋外での長距離レース
■集団での走りやスピードなど、意識障害時の危険
■ステージレ—スなどの体調管理の難しさ

富和 サイクルロードレースは登り坂やスプリント時は身体・心肺機能を極限まで使い果たします。野外のスポーツですし、脱水症や熱中症のリスクは非常に高いと思います。米国心臓医学会(ACC)、によると、長距離ランナーにとって熱中症は心疾患よりも死亡リスクが約10倍高く、熱中症や脱水症のリスクへの理解も充分ではないという報告 1)もあり、自転車競技、特にロードレースでも同様の危険性が考えられます。特にロードレースは集団で走っていることが多いので、ちょっとした不注意により大きな落車事故を起こすこともあります。

また、選手が熱中症などで意識障害を起こした場合でも自転車は高速で走っています。転倒の際に、衝撃を軽減するための受け身の姿勢がとれなくなり、致命的なケガをするリスクもあります。脱水症になると、強い口渇感や筋肉痛、筋肉の硬直(こむら返り)、頭痛、おう吐などが症状として現れます。もちろん、熱中症による意識障害を来した場合には、こうした症状に気付かないこともあるでしょう。
1) Yankelson, L et al., Life-Threatening Events During Endurance Sports – Is Heat Stroke More Prevalent Than Arrhythmic Death?, JOURNAL OF THE AMERICAN COLLEGE OF CARDIOLOGY, VOL.64, No.5, 2014

「熱中症における症状:定義」
熱中症の診断基準としては「暑熱環境にいる、あるいはその後」の症状として、めまい、失神(立ちくらみ)、生あくび、大量の発汗、強い口渇感、筋肉痛、筋肉の硬直(こむら返り)、頭痛、おう吐、倦怠感、虚脱感、意識障害、痙攣、せん妄、小脳失調、高体温等の諸症状を呈するもので、感染症や悪性症候群による中枢性高体温、甲状腺クリーゼ等、他の原因疾患を除外したものとする。(この定義は熱中症診断ガイドライン2015 日本救急医学会を参照しています。)

山下選手は、脱水症や熱中症の経験がありますか?

山下 レース中での脱水症状は陥りやすく、何度も経験しています。熱中症は過去に一度だけ経験したことがあり、それはレース前の出来事でした。日頃の疲れが溜まっていたのに加えて、前日も寝不足でした。レース前という緊張感もあったので、筋肉痛などの疲労感はなかったのですが、スタート直前に突然、生あくび、大量の汗、頭痛、おう吐の症状が出て病院に・・・。熱中症と診断され処置してもらいました。とにかく一刻も早く診てもらうことが大切だと感じました。

どのような対策をとるべきですか?

更新日:2019/07/05

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