私たちは、深刻な脱水状態を防ぐことで、熱中症で搬送される人をゼロにしたい。
妊婦の身体は、自分と赤ちゃんという二人の生命のために、摂取した栄養や脂肪を蓄えやすく変化し、それをエネルギーに変換するために新陳代謝が活発になっていきます。
これは体温を上げ、汗をかきやすい身体になるということ。つわりでおう吐をすることがない人でも、普段から妊娠前より水分を失う量が増えているのですから、おう吐の激しい妊婦は、やはり脱水リスクの高い人であることを知っておきましょう。
妊婦の身体は、赤ちゃんがいる子宮が直腸を圧迫して便を通過しづらくするために、便秘になりがちです。しかも脱水しやすい身体は便を硬くします。圧迫されている直腸にカチカチの便だと、どうしても便秘を助長します。これは痔にもなりやすいということです。
妊婦の場合、便秘からくるお腹の痛みで救急搬送されることさえあります。搬送された人を「うーん、便秘ですね」と便を摘出したら、スッと「お腹の痛みが治まりました」となるほどです。
いまでは、市販薬でも妊婦に向けて酸化マグネシウム[マグネシウムを有効成分とした市販薬緩下剤はありますか?]などを成分とした緩下剤があり、処方する場合もそれを出したりしますが、そうした薬はそもそも腸に水を引いてくる薬なので、口から水分を摂る量が少ないと困るのです。便秘にはやっぱり水分をこま目に摂ることが第一です。
そのうえで、便意を我慢しないようにし、便をしたいなと思った時に取るものも取りあえずトイレへ行く。例えば電車でも途中下車し、ミーティング中でも中座する勢いで。もちろん、食事の際に繊維質を摂り、適度な運動をすることも大切ですが、なにより胃・結腸反射*を大事にしていくこと。そのために朝食と朝の排便の習慣を心がけることも大切です。
*胃・結腸反射 食物が胃に入ることにより腸が動き出すこと。
つわりが終わり安定期に入ると、赤ちゃんが育つにつれて必要とする血液量も増え、そのぶん必要な水分量も増えてきます。
子宮血流量が増え羊水を作るのですが、一部はお母さんの血管からむくみとしてカラダのサードスペースへ蓄えられます。このとき間質細胞などに行く水分も増えますから、実はいつもの調子で水分を摂っても必要量が足りないということになります。
また、大きくなった子宮がリンパ管や血管を圧迫することで血液循環が滞り、カラダは水分を溜めやすくなり、それもむくみにつながります。
よくむくみを嫌って水分を控える方がいますが、それは逆です。十分な水分を摂りながら、無理のない適度な運動をこころがけ、ご夫婦間でコミュニケーションをとりながらマッサージをするなどで対応するようにしましょう。どうしても気になる人は、カリウムを含む食品を摂ることや塩分を控えめにすることを考えてください。
更新日:2019/07/01