熱中症と脱水症に専門家が発信する正しい情報を!隠れ脱水JOURNAL

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Q2:脱水リスクの増加は、高齢者の認知症+せん妄にどのような影響を与えていますか?

A2:まず、高齢者は筋肉量の低下に加えて嚥下機能障害により食事量や、水分量が低下し、慢性的な脱水状態になっていることがあります。

特に認知症や脳血管疾患の既往がある高齢者は、脱水や便秘、薬剤や感染症などさまざまな因子が引き金となって「せん妄」を起こしやすくなります。過活動性のせん妄が転倒、骨折して入院、それにより身体機能(ADL)の低下や認知機能低下を招くことを負のスパイラルと呼んでいます。また、低活動性せん妄により極端な食思不振や水分量低下が体力を低下させ、寝たきりとなってしまうこともあります。

せん妄の原因と兆候

せん妄は本人の苦痛が大きいこともさることながら、介護者にとっても本人の急な変化に驚き、疲弊する要因のひとつです。せん妄は原因を特定して対応することで改善可能なことが多いため、適切な対処が求められます。

対処方法

  • ●せん妄のサインを見逃さない
    ぼんやりする、食欲がなくなる、会話をしなくなる(低活動型)、動き回る、興奮する(過活動型)、時間や場所がわからなくなる見当識障害や注意障害が起こる。これらが数時間から数日の短期間で発生し、1日の中で症状が変化する。
  • ●週一回の体重測定
  • ●食事での水分摂取(一日1リットル程度食事からの水分補給)ができない場合は、経口補水液を活用

Q3:脱水によるせん妄を防ぎADLを低下させないために、何をすればいいのでしょうか?

A3:食事と運動です。

食事で十分な水分がとれないときは、飲水行動を促すよう刺激します。ただし、発汗後に水だけを飲むことによって細胞内のナトリウムが欠乏して生じる低張性脱水の状態となることがあります。

そこで、大量に汗をかいたときには塩分補給のため、梅干しを入れたぬるめのお湯や梅昆布茶を飲むことが有効な場合もあります。。経口補水液のゼリーは、飲みやすく感じることもあるようです。

経口補水液は、いまや高齢者のいるご家庭の必需品と考えていいでしょう。常備しておくことをお勧めします。

また、AIなどを使った軽い運動への誘引によって、飲水行動のきっかけ作りを行ってもいかもしれません。

医療法人社団 至髙会 たかせクリニック理事長 医学博士

髙瀬義昌(たかせ・よしまさ)

包括的医療・日本風の家庭医学・家族療法を模索し、民間病院小児科部長、民間病院院長などを経て、2004年東京都大田区に在宅を中心とした医院を開業。認知症などの画像解析、社会ソリューションを学ぶため東京医科大学茨城医療センターで週1回外来診療をおこなっている。特定公益増進法人 日米医学医療交流財団 常務理事、学校法人国際医療福祉大学 メディカルスーパーバイザー、医療法人社団プラタナス 用賀アーバンクリニック・松原アーバンクリニック 顧問、ITヘルスケア学会 常任理事、杉浦地域医療振興財団 理事など。著書に、『医療を変えるのは誰か?—複雑系で解く21世紀の医療』(はる書房刊)、『ぜんそくなんかふきとばせ!』『おねしょまじんをやっつけろ!』(佼成出版社刊)、『ブレイブのぜんそくってなんだろう』(つくば総合研究所刊)ほか。

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Q1:新型コロナ感染症によって高齢者の臨床現場では何が起こっているのでしょうか?

更新日:2021/06/18

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